2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リード・ラグ効果 / 高頻度データ / 漸近理論 / 非同期観測 / マイクロストラクチャーノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、昨年度の研究において構築した「確率過程アプローチ」に基づいて市場の価格発見機能の統計解析をするための統計モデルおよび統計理論の実データへの応用可能性を検証するために、昨年度の研究費で購入した高頻度金融データに適用してその結果を検証した。実際にデータに適用する前に、まず提案の統計推測手法を統計ソフトウェアRに実装した。さらに、(i) 構築した理論に含まれる近似の精度がどの程度正しいのか、および(ii) モデルの推定方法に含まれるチューニングパラメーターの選択方法について検証するために、計算機を用いたシミュレーションによって発生させた人工データに基づくモンテカルロ実験を行なった。具体的には、(i)については、推定誤差(推定量と真の値の差)、および推定誤差の分布の理論分布による近似が正当化されるのにどの程度のデータ数が必要となるのかを検証した。(ii)については、提案の推定手法には3つのチューニングパラメーターが含まれるので、それらをどのように選択すべきか、およびそれらを動かした場合に推定結果に与える影響の過敏度合いを検証した。検証には過去の実証研究でデータから推定されたパラメーターをもつモデルを使い、実際に提案手法が利用される状況をできる限り反映するようにした。その後、複数の取引所で取引されている同一銘柄の価格発見を先導しているのがどの取引所なのか検証するために、いくつかの銘柄について異なる取引所間での価格発見スピードの違いを提案手法で検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度実行した研究のうち、数値実験に関する項目については概ね満足できる結果を得られた。他方、実証研究に関する項目については、いくつかのケースにおいて経済学的に妥当とは言えない結論が導き出されてしまった。例えば、経済学的には、ある銘柄の価格発見を最も先導している取引所はその銘柄が上場されている市場であることが予想されるが、実際には異なる結果が得られた。また、推定方法に含まれるあるチューニングパラメーターを大きくするにつれて、経済理論的に予想される振る舞いと異なる計算結果が得られるという現象も確認された。これらは元々のモデルに問題がある可能性もあるが、そもそも経済学的な直感に反するのが実際の現象だということも考えられるため、この点について検証が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べた理由から、提案手法を適用すると経済学的直感に反する実証結果が得られるという現象を説明できる要因を、理論およびモンテカルロ・シミュレーションによって検証する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、昨年度購入したデータを用いた実証研究の結果において経済理論から予想される結論とギャップのある結論が得られたため、予定していた新規の分析用データの購入まで手が回らなかったため。次年度はこの購入を予定していた新規の分析用データを購入する。
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