2017 Fiscal Year Research-status Report
労働力の地域循環による創造的都市システムの構築:異質性と寛容性に基づくNEG分析
Project/Area Number |
16K17118
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 労働力の異質性 / 集積の経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、労働者の異質性に起因する都市集積について分析することを目的としている。その際の着眼点は、労働者の多様性の持続可能性が都市の創造性や生産性を左右するということである。労働者の異質性は、生まれ育った地理的・文化的な影響によるところが大きい。よって、都市に集まった労働者が何世代にもわたって長期間固着化すると、労働者間で価値観の共有が進む一方で労働者の多様性が失われる。つまり、都市がその活力を維持するためには労働者の地域循環が必要とされるわけである。 以上の事柄を示すために、本研究では、出身地に応じて差別化される労働者の立地行動を2地域非重複世代モデルを用いた分析を行う。現時点で得られている主な結論は次の通りである。(i) 労働者の居住選択により労働者は短期的には分散するが、各世代の居住選択の累積を通じて長期的には人口分布は一方の地域へ集中化する。(ii) 人口分布が分散化した状態が社会的最適となるが、これは長期均衡では実現されない。(iii) ここに住宅消費を導入した場合には、長期均衡として社会的最適分布が実現される。(iv) 労働量に基づく集積の経済を導入した場合には、長期均衡では社会的最適分布は実現されない。 とくに結論(iv)は日本の地域構造の現状を説明しうるものである。日本において都道府県間人口移動が最も多かったのは1970年前後のことであり、現在では移送比率はピーク時と比較して半減している。これは人口分布が集中構造に収束する過程にあることの反映かもしれないが、本研究を踏まえて注意したいことは、人口の集中化と移動率の停滞に伴い、都市部、とくに東京における労働力の多様性が低下している可能性があるということである。労働力の異質性を維持するためには、それを支える地域経済を持続させる方策を考えることが必要と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論分析の結果を論文にまとめて、投稿に向けて準備を行っている最中である。これは当初のスケジュールに概ね沿っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、理論分析がほぼまとまってきたので、これをディスカッションペーパーなどの形で整理し、学会で報告することを考えている。そこでの議論を踏まえて分析を深め、論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
学会の開催地の関係で、学会報告にかかる出張旅費がかからなかったため。本年度に海外学会での報告を予定しており、そのための旅費に充てることを考えている。
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Research Products
(3 results)