2018 Fiscal Year Research-status Report
労働力の地域循環による創造的都市システムの構築:異質性と寛容性に基づくNEG分析
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16K17118
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 労働力の異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の趣旨は、労働者の異質性に起因する都市集積について分析することにある。その際、労働者の都市への集中化により労働者の多様性が失われることに着目する。結果として、都市がその活力を維持するためには労働者の地域循環が必要とされることが示される。 当該年度は、以上の分析をとりまとめた論文をRIETI(経済産業研究所)のディスカッションペーパーとして発表し、またその改訂版を学術誌に投稿している。本論文では、労働者の異質性が自身の出身地によって規定されるものとして、都市集積が進むと長期的は世代交代を経て労働力の多様性が低下することを示している。2回の査読を経ての主な改訂内容は以下の通りである。 (1)日本の労働者の多様性を測る指標として、戸籍統計に注目する。戸籍は人々の出身地やアイデンティティを示すものと考えられる。東京において戸籍人口と常住人口の差異はこの40年間で低下傾向にあり、その要因の一つは都道府県間人口移動の停滞による地元出身者の増加にあると考えられる。これは本論文の結論と整合的である。 (2)論文の主要な結論として、都市への過度な集中化という市場の失敗が示されている。この要因として世代間の外部性の存在に焦点を当てる。つまり、各世代の居住地選択は次世代の出身人口を決めるため、次世代の効用水準に影響を与えることになる。しかし、各世代が自身の効用のみを考える場合、都市集積は次世代に対して労働力の多様性の減少という形で負の外部性を発生させることになる。 (3)本論文では、異なる地域での労働には一定の調整費用が存在すると仮定している。しかし、調整費用は異なる地域からの労働者比率に応じて低下することが考えられる。よって調整費用を内生化した分析を追加し、都市集積の傾向が強まることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果をディスカッションペーパーにまとめ、国際学会にて報告した。さらに論文を投稿し、現在改訂作業を行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き投稿論文の査読結果に応じて論文の改訂を進める。また、労働力の異質性の程度に着目して分析を拡張することを考えている。
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Causes of Carryover |
国際学会の出張旅費と英文校正費が当初の想定より少なくすんだため。次年度は研究の拡張を行い、学会報告を行う予定である。
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Research Products
(2 results)