2020 Fiscal Year Annual Research Report
Policymakers' incentive and the Design of Monetary Policy Committees
Project/Area Number |
16K17122
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
盛本 圭一 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (50609815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / 金融政策 / 委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、金融政策委員会の意思決定から出発する金融政策分析の計画を一通り扱う論文の執筆をおこない、その論文が査読誌Mathematicsに掲載された。この論文は、当該研究課題で計画した一連の論点をカバーするものである。 具体的には、まず、情報透明性とキャリア形成の誘因から金融政策委員の間で意思決定の調整が働く状況を記述するミクロ経済モデルの分析をおこなった。これは、急にマクロ経済モデルへの複雑な応用をおこなう前に、抽象度の高いミクロモデルでメカニズムの解明をすることが望ましいからである。そこでは、委員会の総意を決定する投票ルールを理解したうえで、最終的な投票結果との距離を調整しようとする個々の委員の誘因があることにより、自らが持つ情報を素直に投票につなげるという古典的な投票理論の前提が崩れることが示せた。これはCondorcet定理と呼ばれる、集団的意思決定において投票者の人数を増やせば増やすほど的確な意思決定につながるという古典的定理の前提が成り立たない状況を示すものである。また、このとき、モデルのパラメータ次第で、実際にCondorcet定理の結論が崩れたり崩れなかったりすることを示すこともでき、そのメカニズムも経済学的に説明することができた。さらに、投票ルールによって、そのパラメータ条件が変わることも示し、その理由を明らかにした。これは、投票ルールの選択という当初から計画していた一つの課題に対する答えを与えるものである。 そして、以上のようなミクロ的なメカニズムをマクロ経済モデルと組み合わせ、金融政策委員会の設計に応用した。その結果、透明性のような協調行動をもたらす環境下では金融政策委員会は比較的少数の人数で構成するのが最適であり、中位者投票ルールの場合は平均投票ルールの場合よりも一層その結論が強調されることも明らかにした。
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