2018 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical Study on Political Economy for Public Infrastructure and Vertical Fiscal Transfer
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16K17130
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岡部 智人 一橋大学, 経済研究所, 講師 (50768364)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政府予算 / 政治的財政循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は実証パートを中心に研究を進めた。具体的に取り組んだのは、政治的財政循環仮説に関するパネルデータ分析で、本プロジェクトでは特にGDP規模に着目して仮説の妥当性を検討した。ここで問題にする政治的循環仮説とは、現政府(与党)が次回選挙での得票を最大化するために、選挙前に財政支出を拡大する日和見的な行動をとるというものである。 1996年から2016年の多国間データ(GDPや政府支出等のマクロデータとPolity IVや国政選挙に関するBrender & Drazenら(2004)のデータを独自に更新したもの等)を用いて分析を行った結果、GDP水準が高い場合では、循環仮説が支持されない一方で、低い場合では仮説が支持されることが明らかになった。先行研究でも先進国と途上国との間で仮説の成立に違いがあることは指摘されていたが、その分類は恣意的であり、GDP水準によって仮説が有意に異なるというのは新しい発見である。また、この理由については、公共財消費についての有権者の時間割引率の違いに由来するものと考えている。 一方、これを地方財政の文脈で捉え直すと、この分析結果は、地方政府の財政支出の違いは、(少なくともその一部が)地域固有の時間的割引率の違いに由来する可能性があることを示唆している。地方政府間に存在する財政支出水準の違いに、選挙を通じた政治的要因が絡んでいるとすれば、興味深い知見と言える。
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