2017 Fiscal Year Research-status Report
選挙と公共投資競争の理論分析:グローバル化の政治構造への影響を探る
Project/Area Number |
16K17141
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
須佐 大樹 中部大学, 経営情報学部, 講師 (30759410)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 財政競争 / 公共投資競争 / 戦略的権限委譲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国や地域をまたいで移動可能な資本を当該地域の政府が財政政策を通じて奪い合う「財政競争」に関する理論研究の文脈に属し、特に多くの研究で対象とされている資本課税率を通じた競争ではなく、地域内企業の生産性の上昇に寄与する公共投資を通じた地域間競争に焦点を当てたものである。更に、そのフレームワークを基礎とし、各地域内の政策決定者を選挙を通じて選び出すプロセスを数理モデル化し、20世紀後半から現在に至る資本市場統合に象徴されるグローバリゼーションが各地域内の政治構造を如何に変容させるかについて論じることをその研究目的としている。 より具体的な研究内容としては1)完全に対称的な2地域間の公共投資競争と選出される政策決定者の属性の関係性(特に資本課税競争のケースで得られる結果との比較)、2)地域の非対称性(例としては地域内企業の生産効率・技術など)と選出される政策決定者の属性の関係性、3)選挙が行われるタイミングが地域間で異なる状況で考察される政策決定者の属性、の3点が大別して挙げられる。また、ここでの「政策決定者の属性」とは、理論モデル上で想定されている個人間の異質性としての資本の初期保有量を指し、この異質性の分布上での位置に着目して考察を行っている。 得られた結果の概略として、1)資本課税率による競争のケースと比較して、公共投資を通じた競争下では分布上で真逆の方向に政策決定者が位置し、2)より生産効率が高い地域では、もう一方の地域と比較してより多くの資本を持った個人が政策決定者として選出され、3)先に選挙を行う地域では、後に選挙を行う地域と比較してより多くの資本を持った個人が政策決定者として選出される、ということが明らかになった。 さらに、政治的な戦略的権限委譲を多国間の関税政策と共に考察し、協調形態と厚生水準を比較する研究への発展可能性の示唆も得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の核となる公共投資競争を如何に定式化し、可能な限り解析的な意味で明示的に結果を導出するかについては、研究開始当初からひとつの課題と目されていたが、やはりこの点に関して特に研究期間中期において時間を要し、学会・セミナーなどにおける発表、および専門的な学術誌への投稿が時期として後ろ倒しとなってしまった。申請時では、本研究の結果を学術誌への投稿・掲載を研究期間内に終了させるとしていたが、現在までにはそこに至っていないため、英文校正および投稿プロセスで必要と考えられる経費を残し、昨年度末に補助事業期間の延長願を提出し、これが受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したとおり、現在までに得られた研究結果を必要箇所を修正した上で学術誌へ投稿するプロセスのみが残されている。より具体的には「研究実績の概要」で述べられた項目1)および項目2)をひとつ、そして項目3)についてをひとつの論文としてまとめ、その上で発表を予定している。査読の過程でさらなる修正作業が発生する可能性は否定できないものの、以降は概ね問題なく研究推進が可能と考えられる。
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Causes of Carryover |
当初の計画においては、全ての研究結果に関して、専門的な学術誌への投稿および掲載を平成29年度内に終了させる予定であったが、研究実施の遅れから投稿まで至らなかった。このため英文校正および投稿プロセスで必要と考えられる経費だけを残し、これを平成30年度に使用する予定である。
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