2017 Fiscal Year Research-status Report
日本における高度外国人材の還流型移民に関する実証的研究
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16K17144
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
劉 洋 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (50635084)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国人労働者 / 移民流出 / 教育 / 平均賃金格差 / 労働力分断 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は日本にいる高度人材の外国人労働者の移民流出の意思決定に影響を与える要因について、計量モデルを用いて考察した。日本にいる高度人材の外国人労働者の9割以上は、アジア出身の外国人労働者であるため、研究の分析結果はアジア、特に中国出身の外国人に限る。移民に関する経済理論に基づき、外国人労働者の海外流出の意思は、労働者の将来の期待賃金によって決められることを考えて、移民の期待賃金モデルを構成して推定を行った。結果として、まず、教育年数と、出身国との平均賃金格差がアジア出身の移民の流出に与える有意な影響は見つからなかった。しかし、労働力分断の変数には有意な推定値が得られた。いわゆる、日本人と区別して外国人を雇用する企業で働くアジア出身高度人材の外国人労働者は、海外へ移民流出するの可能性が高いことが示された。一方、日本特有の終身雇用制度は、アジア出身高度人材の外国人労働者の移民流出を減少することも示された。また、現在の仕事から得られる満足度が高いアジア出身者外国人労働者は、将来の海外流出の意思が低いことも示された。最後に、現在の仕事に就いた当時のモチベーションにも有意な結果が得られた。即ち、就職当時に日本で生活したいために日本の仕事に就いたアジア出身の労働者労働者は、将来海外へ流出する傾向が低く、一方、日本で働くことによって高い賃金が得られるという期待で仕事に就いたアジア出身の労働者は、将来海外へ流出する傾向が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに進展している。2本目の論文を執筆し、ディスカッション・ペーパーとして公表した。そして計画をやや上回り、国際学会2回、日本国内学会1回、研究報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
国内外の理論と実証の先行研究を踏まえ、高度人材外国人(high-skilled workers, 大学・短大・専門学校卒以上)を対象に、賃金の決定要因と、職務満足度(job satisfation)に与える要因を中心に分析を行う。高度人材を誘致するために、適切な賃金を与えることが重要である。そして、学術研究にも、移民の賃金決定および、移民と住民の間の賃金格差が注目された課題である。既存の少ない先行研究の中、Takenaka,et.al (2016)とHolbrow(2016)が日本にいる外国人の賃金に与える影響を推定し、異なる結果が示された。本プロジェクトの関連研究は、一方的に外国人を分析することではなく、日本人との比較を通じて分析を行う。具体的には、(1) 外国人労働者の賃金の決定要因を推定する。その際に、出身国で形成した人的資本と、流入国で形成した人的資本を区別する。また、男女間に賃金格差も考察する。 (2)Blinder-Oaxaca分割の手法で、学歴と職歴がそれぞれ日本人労働者と外国人労働者に与える影響を比較する。それによって、高度人材の外国人労働者の人的資本は、日本人労働者より高く評価されているか、それとも差別されているか、明らかにする。(3) 学歴と職歴以外に、言語、来日年数などによる影響も考慮する。それから、職務の満足度は理論と実証分野で注目されてきたが、日本にいる外国人労働者についての定量研究はまだほとんど行われていない。そこで本研究は、他国の理論と実証研究に基づき、日本にいる高度人材外国人の職務満足度の決定要因を分析する。
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Causes of Carryover |
研究に伴うパソコン・データ通信料、国際・国内学会参加旅費、論文英文校閲費用、投稿料に利用する
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