2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17145
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
牛 冰 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (90756363)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神疾患 / うつ病 / 家族員 / 労働供給 / 労働時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、家計に着目し、メンタルヘルスの影響の大きさを応用計量経済学的手法で定量化することを目的とします。その第一弾の分析として、まず、精神疾患が家族員の労働供給、とりわけ労働時間、無職者の就業希望・希望する雇用形態・求職活動にどのような影響を与えているかを明らかにします。日本ではうつ病など精神疾患患者数が激増している中、患者がどのように、どれほど同じ世帯の家族員の労働供給に影響を与えているかは、日本を対象とした先行研究が少ないため、未だ十分その影響が明らかにされていません。 精神疾患が家族員の労働供給に影響を及ぼすという因果関係を識別するために、個人を無作為に精神疾患患者と同じ世帯に割り振るというランダム実験の設定を再現する分析方法を用います。まず、国民生活基礎調査(2013)の健康票の通院状況から精神疾患患者(うつ病やその他のこころの病気、認知症、パーキンソン病、その他の神経の病気の4分類)を特定します。また、通院患者と比較するため、K6指標も用います。その後、それぞれの患者と同じ世帯にいるすべての個人を特定します。次に、「精神疾患患者と同じ世帯である」というトリートメントに基づいて、患者以外の個人を処置群と対照群に分けます。さらに、推定された個人の傾向スコアを用いて、マッチングによって、処置群の個々と統計的に最も似ている対照群の個々を識別します。最後に、マッチングした両群において、労働アウトカムにおける平均処置効果(ATTとATE)を求め、精神疾患が労働供給に与える影響として認識します。 研究結果の概要として、うつ病の分類では、働く男女家族員とも週労働時間に一貫した有意な減少が見られました。女性より男性への影響は大きかったです。また、働いていない女性家族員の場合、就職希望の確率が有意に増加したが、フルタイム勤務の希望確率や求職活動を行う確率が有意な減少が見られました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証分析に必要な個票データの整備が予定より時間がかかりましたが、平成29年度内にデータの分析が完了しており、論文の執筆が進んでおります。また、平成29年度内において、本研究を国内の研究会で3回発表しております。 本研究に関する今後の予定として、平成30年度の5月に論文の執筆を終え、学術雑誌に投稿する予定です。7月に医療経済学分野の国際大会で研究報告を行うことになっております。
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Strategy for Future Research Activity |
家計に着目したメンタルヘルスの影響を応用経済学的手法で定量化する研究課題の第2弾の実証分析として、当初の研究実施計画通り、今年度より、「親のメンタルヘルスが子どもへの教育投資に与える影響」という研究テーマに取り組みます。引き続き、日本の精密な個票データを申請・利用し、本研究課題の解明に活かします。
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Causes of Carryover |
研究代表者は産休・育休を取得したため、研究活動を1年中断しました。研究に復帰してから本研究課題に本格的に取り組み始めたため、平成29年度において、当初計画していた海外の学会に参加しなかったため、予定していた旅費の支出はありませんでした。また、国内で行われたいくつかの研究会に参加した際、主催者側が旅費などを負担していただいたため、旅費が発生しませんでした。 次年度使用額と合わせて請求した翌年度分の助成金を、研究代表者が平成30年度に参加することになっている国際大会への出張に使用する予定です。また国内の学会や研究会にも多数参加する予定であり、その旅費として使用することを計画しております。
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