2016 Fiscal Year Research-status Report
日本の企業統治における株主総会の役割の変化に関する実証研究
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16K17148
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小川 亮 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (70769918)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 株主総会 / 議決権行使 / 機関投資家 / 安定株主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)株主総会の集中開催や招集通知の直前発送の慣行にどのような変化が生じたのか、また、(2)株主総会において議決権はどのように行使されているのかを解明することを通じて、株主総会の役割の変化に接近する点にある。本研究は、他の研究では見られない、株主総会の開催日、招集通知の発送日、議決権行使結果に関する手作業で収集したユニークなデータを用いることに特色があり、本研究の成果は、望ましい株主総会のあり方を模索する上で重要な政策的インプリケーションを持つ可能性がある。本年度は、議決権行使結果に関する情報を日経NEEDS株主総会関連データから取得し、データセットを構築するとともに、計量分析を試みた。ただし、当初の研究計画に沿った具体的な研究成果はまだ得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、議決権行使結果に関する情報を日経NEEDS株主総会関連データから取得し、データセットを構築するとともに、計量分析を試みた。分析の結果、(1)女性取締役の選任議案に対する賛成率は、男性取締役の選任議案に対する賛成率よりも有意に高いこと、(2)男女兼用の名前を持つ男性取締役(例えば、「雅美」など)の選任議案に対する賛成率は、それ以外の男性取締役の選任議案に対する賛成率より有意に高く、その規模は女性取締役選任議案と男性取締役選任議案の賛成率の差とほぼ等しいことが明らかとなった。また、(3)招集通知に記載されている順番が1番目の経営者とそれ以外の経営者では、後者の方が選任議案に対する賛成率が有意に高いことがわかった。これらの結果は、株主が議案の内容を精査せずに議決権を行使していることの証左となり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、(1)女性取締役の選任議案に対する賛成率は、男性取締役の選任議案に対する賛成率よりも有意に高いこと、(2)男女兼用の名前を持つ男性取締役(例えば、「雅美」など)の選任議案に対する賛成率は、それ以外の男性取締役の選任議案に対する賛成率より有意に高く、その規模は女性取締役選任議案と男性取締役選任議案の賛成率の差とほぼ等しいことが明らかとなった。また、(3)招集通知に記載されている順番が1番目の経営者とそれ以外の経営者では、後者の方が選任議案に対する賛成率が有意に高いことがわかった。今後は、(1)および(2)に関しては、招集通知に記載されている内容から容易に性別を判別できる場合(例えば、写真付きの場合や取締役の経歴欄に女子校卒であることが明示されている場合)に上記の傾向がどのように変化するのかを追加的に分析する。また、(3)に関しては、どのような企業が招集通知に記載されている経営者の並び順を意図的に操作するのかを追加的に分析する。
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Causes of Carryover |
本年度中に研究期間を通じて利用するデータベースを購入予定であったが、当該データベースが値上げされたことで、当初の予算では購入費用のすべてを賄うことが不可能となったため、前倒し支払請求をした。次年度使用額が生じたのは、この件で端数が生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、当初の予定通り、論文投稿料および翻訳・校閲料の一部として使用する。
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