2016 Fiscal Year Research-status Report
非伝統的金融政策実施による所得・消費格差に関する研究
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16K17149
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
英 邦広 中京大学, 経済学部, 准教授 (40547949)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非伝統的金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目である平成28年度では、1.非伝統的金融政策下での期待形成と金融市場に関する研究のサーベイ、2.非伝統的金融政策の効果とそのリスクに関する調査と非伝統的金融政策の政策効果に関する分析を行った。 1.の研究論文のサーベイでは、主に欧州や米国の量的緩和政策実施による金融市場への効果に関する研究や日本の量的・質的金融緩和政策と金融市場の関係を分析した研究を対象とした。 2.の非伝統的金融政策の効果に関する研究として、日本銀行による日本銀行当座預金残高目標の引き上げによる金利への影響を検証した。分析に用いた金利は、無担保コールレート (オーバーナイト物) と無担保コールレート (1ヶ月物) である。短期金融市場の中でも、満期が異なる2つの金利を用いて、量的緩和政策の実施による日本銀行当座預金残高への影響を分析した結果、日本銀行当座預金残高と無担保コールレート (1ヶ月物) の間には安定的な関係が観察され、日本銀行が量的緩和政策を実施したことによる緩和効果が実証的に支持されるという、結果が得られた。左記に関して、「Liquidity Expansion and Short-term Monetary Market in Japan」というタイトルで論文にまとめ、現在、公刊されている。 また、日本の量的緩和政策実施時期の過剰な流動性が金融市場に与えた効果に関しても研究を進めており、「非伝統的金融政策下での流動性供給と金利の期間構造の関係」というタイトルで、日本金融学会中部部会 (名古屋市立大学) で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年計画となっている。1年目である平成28年度では、研究テーマに関連する研究のサーベイと分析に使用するデータの整理を行うことを、主な作業として計画していた。実際には、国内外の非伝統的金融政策に関連する研究を調査すると同時に、分析に必要となるデータの確保、処理、ある程度の分析を行った。しかし、今回行ったデータの整理と分析は、非伝統的金融政策の中の一部分 (量的緩和政策時期) である。また、本課題に関連する研究のサーベイもまだ継続して行う必要がある点と他の期間 (量的緩和政策時期の前後) におけるデータ処理も行う必要がある点を考慮して、「概ね順調に」進捗している、と判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究計画期間の2年目となる。1年目に計画していた、関連研究のサーベイとデータの確保・処理を引き続き行うことと、1年目に行ったサーベイとデータの収集、そして、執筆した、「Liquidity Expansion and Short-term Monetary Market in Japan」の論文を基に、短期・中長期金融市場の変化を通じて金融市場だけではなく、他の経済変数に及ぼした波及効果の検証を行う。 平成29年度以降も、ある段階で研究内容をまとめ、国内外の学会やセミナーで報告することで他の研究者や実務家の人達からの助言を得ることや金融政策や金融市場に関連する有益なデータに関する情報を得ることができるように努め、効率的に研究を進めていく。また、ある程度完成した時には、学術雑誌への投稿も行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に入り、平成29年度以降に所属する研究機関に変更の可能性が生じた。そのため、平成29年度以降に所属する研究機関で、研究課題を適切に遂行することができるように、平成28年度時に所属していた研究機関で購入予定であった設備備品 (パソコン、パソコン関連商品など) や消耗品 (パソコン周辺機器、ソフトウェア、書籍など) などの購入や旅費の使用金額を次年度以降に変更させることにした。その結果、当初、予定していた金額を下回る使用金額になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度に購入予定であった設備備品や消耗品といった項目に対して優先的に使用していく予定である。また、旅費に関しても、当初予定していた研究機関と異なることになったため、使用金額に変更が生じることが予想される。
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