2016 Fiscal Year Research-status Report
負債の満期選択に関する動学モデルの構築とリスクマネジメントへの応用
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16K17151
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田 園 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (10609895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 負債の満期 / ロールオーバー / 倒産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,債権者による負債のロールオーバー戦略と企業による倒産戦略をひとつの枠組みで導くように理論モデルを構築して分析を行った.不確実性と最適停止問題に適したオプション理論と経済主体の相互依存関係に適したゲーム理論を融合する分析手法を用いて,債権者のロールオーバーの意思決定と企業の倒産の意思決定に関する閾値の均衡戦略を導出した.具体的には,満期時点が異なる債権者間の動的協調問題を考慮して,企業の倒産閾値が与えられたとき,債権者価値の無差別条件によって,債権者のロールオーバー閾値を決定した.それと同時に,債権者のロールオーバー閾値が与えられたとき,企業の株式価値が最大化となるように,企業の倒産閾値を決定した.その結果,不確実性が大きくなると,債権者による負債のロールオーバー閾値が高くなる一方,企業による倒産閾値が低くなることがわかった.また,債権者は不確実性が大きいとき,短期債を好むが,不確実性が小さいとき,長期債を好むことを明らかにした.実証研究で指摘されている危機前において負債の満期を短くする傾向を理論上解釈することができた.上記の研究成果を" Debt Rollover, Bankruptcy, and Debt Maturity"という題目で,大阪大学中之島ワークショップ「金融工学・数理計量ファイナンスの諸問題」や国際研究集会Winter Workshop on OR, Finance, and Mathematicsにおいて発表報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つ,「債権者による負債のロールオーバー戦略と企業による倒産戦略をひとつの枠組みで導く」について,ある程度研究成果が得られたので,概ねに順調に進展していると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,成長オプションがある場合,債権者による負債のロールオーバーの意思決定が企業の投資の意思決定にどのような影響を及ぼすかについて,定性的かつ定量的な分析を行う予定である.また,負債の満期における流動性リスクと倒産リスクのトレード・オフ関係を明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,研究図書の購入が予定より少なかったことがあげられる.また,ソフトウェアMatlabとMathematicaの保守サービスの更新を必要としなかったことがあげられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,研究図書の購入を増やすことと国際学会への出張旅費に使用することを計画している.
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Research Products
(2 results)