2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17154
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西川 輝 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30622633)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ブレトンウッズ体制 / 国際収支調整 / 資本自由化 / 変動相場制 / 国際金融機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ブレトンウッズ体制の変容が国際通貨基金(IМF)の役割に如何なる変化をもたらしたのか解明することにある。研究開始から2年目に当たる平成29年度においては、当初の計画通り、先行文献のサーベイとこれまでに収集した一次史料(IМFの主要国に対するコンサルテーション関連資料、ОECD第三作業部会の議事録、BIS史料館で収集した資料の一部)の解析を中心に作業を進めた。 具体的には、ブレトンウッズ体制の形成から崩壊までを国際収支の調整問題を軸に据えて捉え直すなかで、ドル不足の解消が課題であった1960年代初頭までの時期に対し、アメリカの国際収支が問題となりブレトンウッズ体制が崩壊に向かう1970年代初頭までの時期において、IМFの経済政策(為替管理、為替相場調整、マクロ政策調整)の方針がどのように変化したか検討を進めた。またIMFを軸にしつつ、ОECD第三作業部会やBIS、G10といったその他の重要な国際フォーラムの役割ついても比較検討を加えた。 一連の作業の結果は、本研究の中間的な成果として年度末に2つの国内学会において発表し若干のコメントを得た。他方、当年度においては、9月から10月にかけてカリフォルニア大学バークレー校に客員研究員として在籍し本研究を発展させる機会を得た。具体的には、本研究の基盤をなすブレトンウッズ体制の形成期におけるIMFの役割についてのペーパーを同大学のセミナーで発表し、IMFの政策分析を行うための分析視角の在り方を中心に有益なフィードバックを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」でも述べた通り、当初の計画通り、研究開始から2年目にあたる当年度においては、先行文献とこれまでに収集した一次史料の解析を行うとともに、その中間的な成果を学会で発表することができた(政治経済学・経済史学会の欧州統合史フォーラムおよび日本金融学会歴史部会)。 IMFの一次史料に関しては、すでに平成28年度の報告書でも述べた通り、IMF史料館の閉鎖に伴い引き続き未公開資料の入手が困難な状況にあるが、主要国に対する8条コンサルテーション史料などすでに電子化された史料と年次報告書などの刊行物を組み合わせることで主要な政策方針(為替管理、為替相場調整、マクロ政策調整など)について概ね検討することができている。このため昨年度の報告書で記載した「アメリカ国立公文書館への追加的な史料調査」は実施しなかった。他方、カリフォルニア大学バークレー校での在外研究を通し、IMFの政策形成過程の分析視角について有益なフィードバックを得ることができた。 以上より、平成29年度までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」ものと判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に行った文献および史料の解析作業に基づき、最終年度にあたる平成30年度において総括的な成果をとりまとめ発信するという当初の予定に変更はない。適宜、最新の文献サーベイと一次史料の解析を行いながら、これまでの中間的な成果を学術論文にまとめあげ、学会等で発表したのちジャーナルに投稿する計画である。
|
Causes of Carryover |
理由:平成29年度においては、アメリカ国立公文書館での資料調査および国内学会への出張費用、文献および資料保存・整理用の器材の購入費用、史料整理補助者のための謝金、文献複写費を直接経費として計上していた。他方、国内学会への出張費用を横浜国立大学の学内予算から支出したこと、アメリカ国立公文書館への出張をとりやめカリフォルニア大学バークレー校にて在外研究を実施したが、この渡航・滞在にかかる費用の一部を横浜国立大学の学内予算で補填したこと等の理由から、旅費が当初の支出予定額を下回った。また、文献購入費用はおおむね予定通りだったが、資料保存・整理用の器材を一部購入しなかったこと、史料整理補助者を雇用しなかったこと等の理由から、物品費、謝金についても支出予定額を下回った。以上、旅費・物品費・謝金を中心に直接経費の支出額が当初の予定を下回った。
使用計画:平成30年度においては、文献の購入費用に加え、国際学会への出張旅費および参加費用、さらに英文ジャーナル投稿のための英文校正費用を直接経費の支出項目として想定している。
|