2017 Fiscal Year Research-status Report
組織のオープン化が問題解決・意思決定に与える影響の理論的・実証的研究
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16K17158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲水 伸行 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50572830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営学 / 組織論 / 意思決定 / オープン化 / シミュレーション / 創造性(クリエイティビティ) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、組織のオープン化の職場レベルでの実態を、綿密なフィールド調査で明らかにした上で、これらの調査結果をもとに Agent Based Simulationなどのモデリング手法により理論化することを目的としている。特に、問題解決と意思決定に関する 1)確実性、2)迅速性、3)創造性の3つの統合的視点から新たな組織理論を構築することを狙っている。 平成29年度では、組織の物理環境がオープンになるにつれてワークエンゲイジメントにどのような影響があるのかについて、3000名を超える企業や職種横断的な質問紙調査のデータを用いて分析し、書籍の一部としてまとめた。 また、職場レベルでのオープンなコミュニケーションの活性化が企業の新製品開発の導入とどのように関連しているのかについて、日本の電機産業の100拠点近くのデータを用いて分析し、英文ジャーナル(査読付き)に掲載することができた。 さらに、今年度は、創造性(クリエイティビティ)に力点を置いて既存研究のレビューおよびフィールド調査を実施した。3000名近いサンプル数を集めた企業や職種横断的な質問紙調査を行い、その成果は、2018年6月の組織学会で報告すると共に、国際的なジャーナルの論文投稿に向けて準備中である。また、既存研究のレビューについては『一橋ビジネスレビュー』に解説記事を連載して一般向けにもわかりやすく紹介することに努めた。 加えて、ある企業の協力で、職場の行動データをセンサー技術を用いて取得するとともに、毎日質問に回答してもらうパルスサーベイを組み合わせた大規模な実験を実施し、ここで得られたいわゆる職場ビッグデータをもとにAgent Based Simulationによるモデル化も視野に、解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、一部の成果については論文や書籍として公刊できたとともに、最終年度である次年度に繋がる調査データの取得をある程度できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の現場組織の強みは今尚世界から注目されているところでもあり、本研究は当該分野を国際的にも牽引できる可能性を秘めている 。また、本研究において収集されたデータはあまり類を見ない貴重かつ独自のデータとなっている。そこで、平成30年度は、これまでに得られた調査結果を国際学会・ジャーナルでの発表に積極的に取り組む予定である。 加えて、平成30年度は、職場のメンバー一人一人の具体的な行動やコミュニケーション・パターンをセンサー技術等を用いて計測するとともに、パルスサーベイと呼ばれる高頻度の質問紙調査(e.g., 毎日回答してもらう)をより大規模に実施し、オープンな働き方や職場と問題解決や創造性がどのような関係になっているのかについて定量的に分析をしていく予定である。実は 、一部の調査先企業ではすでに実施済みであり、別の複数の調査先企業からも協力を得られる見通しが立っており、実現に向けて準備中である。 さらに、既存研究へのレビューを継続的に実施するとともに、フィールドから得られたこれらのデータを理論化(シミュレーションを用いたモデル化)することにも順次着手していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施した調査をもとに英語論文を執筆し、その英文校正費として支出する予定であったが、調査結果の分析および執筆にやや時間がかかり、校正に出すことができなかったため。 また、センサー技術を用いた職場の行動データを取得する際、実験的な位置づけということもあり大きな支出にならなかったこと、及び調査協力企業からも協力が得られたため。 平成30年度には、前年度の調査結果をもとにした英語論文を執筆するとともに、職場の行動データ取得のための調査遂行費用として支出する予定である。
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Research Products
(5 results)