2016 Fiscal Year Research-status Report
複数の社会システムの影響を受けるイノベーション移行研究の研究:小型無人機のケース
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16K17161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 裕子 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任助教 (40600698)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小型無人機 / リスク分析 / 政策とイノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
小型無人機(ドローン)のアプリケーションが期待される中、日本国外の関係者とドローン活用にむけた課題をアプリケーションを特定せずに議論をおこなった。例えば、欧州の産業団体であるUVS-Internationalの18th Regulatory, Policy & Innovation Forum (22-23 June)や、国内のドローン展示会ドローンソリューション&技術展(5月25ー27)、日本航空宇宙学会主催の第54回飛行機シンポジウム(10月25日ー25日)、さらにイノベーション学専門家の学会であるPortland International Conference (4-8 Sept)で発表と議論を行った。 その中で、ドローンの社会トランジッションに大きく影響を与えかねないのは、国内外ですすむ規制案であることがわかった。例えばわが国では、一昨年前に発生した首相官邸屋上でのドローン発見を発端として航空法が改正されたが、イノベーションを阻害せず(イノベーションにefficient)、しかし社会の安心安全をしっかりまもる(安心安全にeffective)ための政策の設計が重要であり、いかにefficiencyとeffectivenessを両立するか、国内外で近々の課題となっている。 平成28年度は、effectiveだがefficientな規制設計には、適切なリスク分析手法が必要であり、MITのLeveson教授が提唱し、NASAやGEなどが研究開発にとりいれているシステム論を応用し 政策評価手法を提案し、日本、フランス、米国の最新の規制案の分析をおこなった。 現在、その分析結果をまとめ、Technology Forecasting and Social Changeに投稿し、マイナーリビジョンを3月に回答している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、小型無人機(ドローン)に関する専門家とのネットワークを国内のみならず国外にも広げることができ、その結果、世界で期待されているドローンのアプリケーション方法や、その課題、そして政策議論について最先端の情報を得る環境を構築できている。 そのため、予定していた論文/特許情報分析による潜在的応用先や課題の抽出よりも、ドローン全体のトランジッション課題の分析を優先し、その結果、リスク評価手法の提案までいたった。 したがって、一部予定の項目を達成していないが、リスク評価手法の構築や評価に関しては、予定以上の進捗をとげていて、”おおむね順調に進展している”と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画どおり、個別のアプリケーションのトランジッションと、その他のアプリケーショントランジッションとの相互関係を研究したいと思っている。その中で、物流事業と航空輸送事業にかんして考察を深めたい。 労働者不足がさけばれるなか、物流事業でのドローンのアプリケーションと、空の安全知識をもった航空事業者がドローンを社内外の課題に適用しようとする中、航空事業者の知見が、物流ドローン実現課題を解決する可能性もあり、しかし、競合してしまう可能性も秘め、複雑な関係性が予想される。 さらに、ドローンのトランジッションに対して、重要と考えられている運航管理システムの開発動向や、また規制面では、欧州のなかで柔軟な姿勢がめだつスイスの物流事業実現にむけたとりくみも、イノベーション移行マネジメントに有益な考察を提供できると考え、今後すすめていきたい。
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