2016 Fiscal Year Research-status Report
ベンチャー企業のエクイティ・ファイナンスに関する研究
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16K17167
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 秀徳 名古屋大学, 経済学研究科, 講師 (90771668)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベンチャー企業 / ベンチャーキャピタル / アントレプレナー・ファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本におけるベンチャー企業のエクイティ・ファイナンスの現状と課題を明らかにすることである。そのために昨年度(平成28年度)はまず、ベンチャー企業とベンチャーキャピタル(VC)間のマッチング問題に関する研究を推進した。具体的には、ベンチャー企業の経営陣と、ある特定のVCとの間につながりが存在する場合、そのベンチャー企業はつながりがあるVCから資金調達がしやすくなる可能性を検証した。経営陣の一連の経歴を新規株式公開時の目論見書から収集し、経歴と関連のあるVCから投資を受ける確率を推定した。分析の結果、ベンチャー企業の経営陣に、ある経歴が存在する場合、関連するVCから投資を受ける確率が高くなることを明らかにした。この傾向は特に、銀行系VCや事業会社系VCで顕著であった。 一方で、VCが関連先のベンチャー企業に投資する場合、新規株式公開(IPO)時のコストやIPO後のパフォーマンスには影響しないことが明らかになった。これらの結果は、VCとのつながりが存在する場合、関連するVCからの投資を受けやすくなるが、その投資が必ずしも良好なパフォーマンス(低い資金調達コストや低い失敗確率)には繋がっていないことを意味する。ベンチャー企業のように、外部投資家との間の情報の非対称性が深刻な企業にとって、外部投資家とつながりがあることは、情報の非対称性を軽減する手段となりえるが、逆にそれがコストになっている可能性を示唆している。VCにとって、ポートフォリオ企業選択時の甘いスクリーニングや、投資後の弱いモニタリングにつながっている可能性がある。しかし、あくまでも可能性であり、これらの証拠を発見することが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析を終え、結果を論文にまとめ、海外ジャーナルへの投稿準備ができているため、おおむね順調に進展しているといえる。論文は平成29年6月までに投稿予定である。また関連研究についても、分析のためのデータベースの整備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、日本企業とVC間のマッチングに関する研究成果を海外ジャーナルに投稿する。 その他、ベンチャー企業のエクイティ・ファイナンスの現状について、もう一つの視点から分析を進める。海外VCが日本のVC市場に参加することの影響を分析する。近年、日本のVC市場において、海外VCの存在感が高まっている。このような新たな市場参加者が登場した場合、既存の投資家(日本国内のVC)はどのような行動をとるのだろうか。具体的には、海外VCと日本VCのパートナー選択の問題を分析する。日本のVC市場における海外・国内VC投資に関するデータはすでに取得しており、今後は海外・国内VC投資の特徴(規模・タイミング・投資先企業)にどのような違いがあるのかを記述的に分析する。
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