2020 Fiscal Year Research-status Report
商標の実証分析:イノベーションの代理変数としての利用可能性と企業成果への効果
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16K17168
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70507201)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 商標 / イノベーション / 実証研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
商標が企業のイノベーション活動の強度を反映しており、さらにそれが商標制度によって法的に保護されるのであれば、商標の出願や保有は企業成果に貢献すると期待される。2019年度までは、我が国上場企業を対象として商標の企業成果に対する効果を分析した。具体的には、企業が自ら商標を出願することの効果と、競合他社が商標を出願することの効果を分析している。
2020年度は、これまでの網羅的な分析を補完する意味で、特定産業に焦点を当てた分析を実施した。具体的には、上場製菓企業における5年間パネルデータを作成し、商標の利益率への効果を分析した。新製品及び商標の状況を分析すると、商標取得率(一定期間に上市された新製品のうち既存あるいは新規の商標で保護されているものの割合)が20%程度の企業から90%に近い企業まで存在することが分かった。取得率が低い企業においては、主力商品と見なせるものについても商標登録がなされていないケースが存在した。また回帰分析から、新製品に対する商標取得率の割合が高いほど利益率が高いことが確認された。この結果は、いわゆるアンブレラ・ブランディングの効果を実証したものと解釈できるが、ブランドの核として商標権が重要な役割を果たしていることを示唆している。
2021年度は、補助期間の延長が認められたので、サンプルサイズの拡大を図りつつ、上記分析を深化させ、論文として成果をとりまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
補助事業の延長期間中に、海外の研究協力者等からアドバイスを仰ぎ、研究を深化させる予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により渡航ができなかったことなどを踏まえ、「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業の再延長期間中に、海外の研究協力者等からアドバイスを仰ぎ、研究を深化させる。それら助言を元に投稿用論文を改訂し、掲載を目指す。研究結果を統合し、特許データでは接近が難しかった非技術的イノベーションの実態解明に向けた商標データの利用可能性とその限界についてまとめる。また、企業の商標マネジメントへの示唆を得る。また、これまでの研究期間を通じて見いだされた商標の実証分析にまつわる課題や今後の研究のシーズを整理する。
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Causes of Carryover |
【理由】海外研究協力者との日程調整がつかなかったため、主として研究打合せを目的とした旅費の一部を次年度に繰り越した。
【使用計画】繰り越した旅費は海外での成果報告に使用する予定であったが、現在の渡航制限がしばらく解除されない場合は、英文校閲費など成果のとりまとめに係る費用にあてる。
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