2017 Fiscal Year Research-status Report
資源間関係論の構築に基づいた社会企業活動のブリコラージュ的な過程の一考察
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16K17175
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 解剖学的視点 / 資源単位の細分化 / 多様な文脈での再認識・評価 / 資源間関係の視点 / 非相互的関係と相互的関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、資源制約への対応を説明するこれまでのブリコラージュ(資源制約の中、手元にある資源だけでやりくりして、問題を解決していく創意工夫)理論を、資源そのものを解剖学的に細分化する解剖学的視点と資源間関係の視点から修正した。 第1は資源の分析単位を解剖学的に細分化する解剖学的視点である。解剖学的視点とは、既存のリソースベーストビュー研究(後述)が想定する資源単位をさらに細分化することを意味する。そして複数の文脈からそれら個々の構成要素を再評価・認識していくことにより、これまでの暗黙的前提や資源単位の設定レベルでは見過ごされてきた潜在的かつ有力な資源の構成要素を再認識することが可能になる。さらにいえば、これまでのより大きな資源単位に基づけば丸ごと無価値と判断される資源の内部にも、直接的には制約の源泉にならない構成要素を見出すことができるようになり、それを創造・強化する道が開ける。 第2に、結合の候補となる資源の抽出とそれら資源の新結合の創出は、資源間関係の視点に基づいて実現される。資源間の相補性として一方的依存(非相互的関係)と相互依存(相互的関係)は既存研究で提示されているが、資源制約状況下でこれらの関係がいかに形成されていくのか、また、その関係がいかに資源制約を克服していくのかという動学的過程は詳細に説明されていない。資源間関係の視点とは、ある資源(既存の大きな資源単位)において制約の源泉となる構成要素を他資源の構成要素と結合させることで代替・補完するという資源間の動学的関係の考察を意味する。よって、非相互的関係に基づいて候補資源を抽出し、新たに組合わせることにより、個別の資源の強化による制約を克服すると同時に、相互的関係に基づいて複数資源を横断した構成要素間の組み合わせ(一般的に言われている相互補強の実態)を形成できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者と定期的に勉強会を実施し、研究施行状況を確認し、研究成果を共有している。また、今後の研究計画(データ分析や研究成果の公表)についても相談している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は事例の比較を通じて、理論上の一般化を目指す。障がい者のケースで考察された理論を震災復興や社会的課題の解決に転換・応用する時に、どういうことが起こりそうなのか、という分野を拡大しながら、これらの理論の適用範囲を明らかにすることを通じて、理論的枠組みを構築していく。
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Causes of Carryover |
資源制約への対応を説明するこれまでのブリコラージュ理論を修正するために、本研究は資源そのものを解剖学的に細分化する解剖学的視点と資源間関係の視点を提唱した。これらの視点の新規性、独自性を強調し、そして、それに基づいた資源制約への対応の動学的過程を提示できるよう、リソースベーストビューなど既存の戦略研究における「資源」の定義、資源制約状況下での制約性の定義、主観的定義の具体的なプロセス、資源自体の動的な変換・強化のプロセスや資源間の非相互的関係・相互的関係の形成の動学的プロセスの考察に専念した。そのため、海外調査費も含めた未使用金が発生した。 平成30年度において、事例の比較を通じて、理論上の一般化を目指すため、更に文献研究、ヒアリング調査を実施していく。そのため、未使用金を研究図書購入、研究調査に使用する。
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