2018 Fiscal Year Research-status Report
資源間関係論の構築に基づいた社会企業活動のブリコラージュ的な過程の一考察
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16K17175
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 解剖学的視点 / 資源単位の細分化 / 多様な文脈での再認識・評価 / 資源間関係の視点 / 非相互的関係と相互的関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、資源制約への対応を説明するこれまでのブリコラージュ(資源制約の中、手元にある資源だけでやりくりして、問題を解決していく創意工夫)理論を、資源そのものを解剖学的に細分化する解剖学的視点と資源間関係の視点から修正した。平成30年では、この修正ブリコラージュ理論の妥当性を検証するため、さらに無作為に抽出した30事例で追加的に考察・検証した。これらの事例はベトナムや日本における福祉施設、教育機関、社会的企業、一般営利企業である。事業の領域も資源間の組み合わせも多様である。障がい者の事例だけではなく、復興支援事例や幼児教育現場においても、本研究が主張する解剖学的視点および人、モノ、カネや情報的資源の間の相補性(資源間関係)に基づいた組み合わせによって、資源制約の状況に対処しているという同様の結果が得られた。
例えば障がい者雇用の先進企業においても、障がい者を負担というよりもむしろ潜在的に有用な人的資源として捉え、彼等の特技などにも注目し、既存の方法とは異なる訓練などでそれをさらに強化することによってその人的資源を有効に業務に活用することが可能であった。ある青果店では、法的定義に基づけば就労不能と思われる障がい者も、実は健常者よりも目が良くて丁寧なため、虫が入っている野菜や腐食した部分を見つけることは一般の健常者よりも優れており、その能力が訓練を通じてさらに強化され、青果店の価値ある戦力になっている。
日本のE氏は、これまで発展途上国支援、震災被災者支援や地域活性化の様々な活動を仕掛けてきたが、一般的に考えられているような活動資金や人的資源の不足が致命的な問題ではないと考えている。それぞれの活動を進めていく中、E氏は、熱意や社会問題に対する理解を有する外部者とのネットワークを活用し、描いた目的を共有し、活動賛同者と一緒に個々の制約を補い合い、創造的に解決策を共創している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論検証のために用いた事例は研究代表者が長年調査している、または、直接推進しているものであるため、豊富な情報やデータがある。そのお陰で、理論の妥当性を順調に検証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を学術著書や研究論文にまとめ、日本国内外において発信していく。また、一般人や若者向けの教養本や絵本等を作成して、より分かりやすく研究成果を提案していく。
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Causes of Carryover |
平成30年度では、本研究が提唱できた理論を福祉施設、社会的企業や一般営利企業で検証した。より広い応用範囲を図るために、幼児養護・教育、大学の教育現場や若者の進路選択・将来設計にも検証範囲を拡大した。従って、これらの分野における本研究の位置づけ・新規性・独自性を強調するために、これらの分野の文献研究と本研究の応用可能性の研究に専念した。そのため、調査費、学会出張の旅費も含めた未使用金が発生した。
令和元年度において、研究成果を英語、日本語とベトナム語で発信していくため、未使用金を著書、学術論文の校正料、印刷費、学会報告の旅費に使用する。
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Research Products
(1 results)