2017 Fiscal Year Research-status Report
利益還元政策と賃金・雇用の関係-株主と従業員の間での利益分配問題-
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16K17177
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
佐々木 寿記 東洋大学, 経営学部, 講師 (10609738)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ペイアウト政策 / 配当 / 自社株買い / 賃金 / 雇用 / 非正規雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
従業員の間での利益分配問題に焦点を当てた研究を行った。まず日本企業がペイアウト金額を変化させたときに賃金や雇用者数をどのように変化させるのかをという研究を行った。検証結果からは従業員と株主が相互に協調しながらペイアウト金額が増えた時には賃金・雇用も増加し、一方が減少する時には他方も減少もするといった行動が観察された。こちらの論文は雑誌にも投稿したが、残念ながらリジェクトとなり、再度の修正を余儀なくされている。 また、正社員と非正規社員の雇用・解雇コストの違いや配当と自社株買いの間の金額の変動のしやすさの違いに注目した研究も行った。分析の結果、非正規社員に比べ解雇や再雇用がしづらい正社員の割合が多い企業は、業績悪化時に適切な雇用調整やコスト調整が行いづらいため、ペイアウトの際には金額の調整がしづらい配当よりも自社株買いを実施しやすくなることが明らかとなった。こちらの研究は論文として学内雑誌に投稿した。また、この研究をより発展させた論文を執筆中であり、海外での報告を目指している。 さらに本研究テーマに関連し、自社株買い解禁以降の日本企業のペイアウト政策の時系列的推移を検証した研究も行った。その結果、我が国企業のペイアウト手法においては依然として配当がその中心であることや、自社株買いはいまだに補助的な役割にあることなどを明らかにした。こちらの研究も論文として学内雑誌に投稿している。 また、ペイアウト政策と表裏一体の財務政策である現金保有についても研究を行っており、こちらは銀行の健全性の悪化が企業の現金保有に与える影響を検証し、銀行の健全性が悪化したときには企業は現金保有を積み増すことが明らかとなっている。この論文は海外の雑誌に投稿中である。 最後に、現在進行中の研究テーマとして、労働組合や従業員処遇とペイアウト政策の関係に関する研究も進展中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内雑誌に論文を投稿したとはいえ、当初の目標である国際学会での発表や海外雑誌への投稿はかなっておらず、今後、一層励まなければならないと感じている。 日本の経済的地位の低下とともに日本を対象としたテーマは海外で受け入れられづらくなっており、現在の研究の視点を少し変えることで、国際的に通用するものになるような研究テーマにブラッシュアップしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は科研費の最終年度であるため、海外での発表を目指しつつも国内国外にこだわらずに一定の成果も仕上げなければならないというジレンマに陥っていることは否めない。昨年度から労働組合や従業員処遇に関する研究を進めているが、検証に必要なデータも昨年度にある程買いそろえることができたため、これらを使ったショートペーパーの執筆も予定している。 また国際学会での研究発表を目的とした論文執筆も同時並行で進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)