2017 Fiscal Year Research-status Report
経営実践における「戦略」の正当化と「戦略論」の規範喪失に関する理論的・実証的研究
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16K17192
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
高木 俊雄 昭和女子大学, グローバルビジネス学部, 准教授 (80409482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営戦略 / SaP / 実践としての戦略 / CMS / 新制度派組織論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは以下の3つの課題を設定し研究を進展させている。それは、「課題1:経営戦略論の発展による戦略概念の正当化と経営戦略論の規範喪失」、「課題2:戦略概念が正当化されることで現れる戦略実践」、そして「課題3:研究者は経営戦略論をいかに研究することが可能なのか」である。 2017年度は、「課題2:戦略概念が正当化されることで現れる戦略実践」に対応するために、企業を対象としたインタビュー調査および資料収集・分析を行なった。具体的な対象としては、研究代表者が前回科研の際に調査を行ったICT企業のライン・マネジャー、技術者等に対して実施した。インタビューにおいては、経営実践にかかわる組織メンバーそれぞれがどのように「戦略論」という表象を戦略的に利用しているのか、その背後にはどのような意味が存在するのかを明らかにするために詳細に聞き取りを行い、その結果、彼らが「戦略論」を用いる際の彼らそれぞれの背後にある目的、戦略論の自身の行為の根拠づけ、そして戦略論が契機となる行為について明らかにした。 また、これまでの研究成果について、論文(AJBS Conference Proceedings)、学会発表(2017 AJBS (The Association of Japanese Business Studies) Conference、SCOS (Standing Conference on Organizational Symbolism) 2017×2回)において公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先にも述べたように、2017年度は、「課題2:戦略概念が正当化されることで現れる戦略実践」に対応するために、企業を対象としたインタビュー調査および資料収集・分析を行なった。具体的な対象としては、研究代表者が前回科研の際に調査を行ったICT企業のライン・マネジャー、技術者等に対して実施した。また、これまでの研究成果について、論文(AJBS Conference Proceedings)、学会発表(2017 AJBS Conference、Standing Conference on Organizational Symbolism 2017×2回)において公開した。このことから、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」といえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、課題3の「研究者は経営戦略論をいかに研究することが可能なのか」について明らかにする。 このことを行う理由として、こんにちの経営戦略論においては確固たる理論が存在するのではなく、「戦略」という表象にかたどられた組織現象を示すにすぎない。なぜこんにちの戦略論では、初期の規範が失われ、多様な考えが生じるのだろうか。その背景には、Chandler(1962)に代表されるように、適切な戦略の設定こそが組織のパフォーマンスを向上させるという前提が存在している。さらにPorter の競争戦略論の出現以降、戦略はより特定的に企業の収益性を上げるツールと理解され、また Mintzberg により、計画された戦略は変化が激しい環境において不要であると声高に主張されることにより、戦略に対しての関心は高まる一方で、論に対する十分な議論がなされなくなっていったことが挙げられる(e.g., 庭本・藤井 2008)。すなわち、経営戦略論は、経済学などの知識を用いて、実務家に対してより良いツールを提供する応用科学として発展していったのである。その結果、当然ながら論者毎に異なる経営戦略論が形成されることとなり、戦略が企業の長期的発展のために重要な役割を担っていることに対して異論はないにもかかわらず、そもそも経営戦略論とは何かについて研究者間で十分な合意を得ることはなくなっていった。 このことに対し、本科研プロジェクトでは、既存の経営戦略論に対して批判的に考察するのみならず、経営戦略論を研究するとはどのような意味を持つのかという、経営戦略論が拠って立つ方法論的位置をも問い直す。そのため、我々はどのように経営戦略論を研究することが可能なのかについて検討をおこなう予定である。
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