2016 Fiscal Year Research-status Report
退出段階の顧客接点におけるwaitingと技術受容性,満足に関する実証研究
Project/Area Number |
16K17194
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森村 文一 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 顧客満足 / 待ち知覚 / サービスマネジメント / 小売オペレーション / セルフレジ / セルフサービス技術 / 技術受容 / 役割知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究課題では,企業が提供するサービスの「退出段階の顧客接点としての決済」における「顧客の待ち(waiting)」と「サービスに対する顧客満足度」の関係,その関係への「セルフレジへの期待」やセルフレジを使いこなすために必要となる「技術に対する能力」の影響を明らかにすることを目指している。 2016年度の研究計画では,文献調査と研究モデルの構築を掲げている。研究計画と対応した実績として,次の2つを挙げることができる。1つ目は,「待ち」「顧客満足度」「選択肢」に関する文献調査と基本モデルの構築の完了である。まず,海外査読付き学術雑誌のJournal of Marketing Channelsへの論文掲載と査読者との議論を通して,「顧客が持つ選択肢の違いや数」「顧客の持つ技術に対する能力」という点が理論的に大きな問題となることが確認できた。これによって,「待ち」や「顧客満足度」「選択肢」に関して不足していた文献調査を行い,第1段階として目標に掲げていた基本モデルの構築が完了できた。 2つ目は,顧客が一般的に持つ「期待」と「顧客の技術に対する期待」,そして実際の「技術の利用」に関する文献調査と基本モデルの構築の完了である。海外学会European Operations Management Associationにおける査読付き学会発表を通じて,顧客の技術利用に関する理論的な課題点として,「期待」の種類,もしくは技術における「自身の役割」の理解が挙げられることが確認できた。そこで,その理論的課題に基づいて文献調査を行い,第2段階として掲げていた応用モデルの構築が概ね完了できた。加えて,小売店舗のオペレーションや技術利用に関して,小売マーケティングを専門とする研究者と議論することやフィールド調査によって,上の2つの研究計画に対応する実績を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は,1)待ちの評価と顧客満足度の関係は,顧客が持つ決済の選択肢によってどのように影響を受けるのか,1)待ちの評価と顧客満足度の関係は,顧客が持つ決済方法への期待によってどのように影響を受けるのか,という2段階の研究について,文献調査・フィールド調査と基本モデルの構築を計画していた。この2段階の研究計画の進捗はおおむね順調に進展している。 第1段階の研究に対しては,Journal of Marketing Channelsへの掲載とその過程での査読者との議論が大いに貢献した。この議論を通して,理論的に「実際の顧客が有人レジとセルフレジという2つの決済手段を同時に持つ,またはどちらか片方しか持たないという状況」を想定しなければならない点が明確になった。これを基に,従来のサービス研究や決済に関する研究がどのような状況を想定していたのか,異なる状況では待ちの評価が満足度に与える影響がどのように変わるのか,についての追加的な文献調査が完了した。そしてフィールド調査では,実際に両方または片方だけの選択肢を持つということが起こり得るのか,それぞれどのようなサービス設計になっているのかを確認することができた。これにより,基本モデルの検討が概ね完了している。 第2段階の研究に対しては,European Operations Management Associationにおける査読付き学会発表が大いに貢献した。この議論を通して,顧客が一般的に持つ期待や技術に対する期待といっても,理論的には細分化が必要であること,どのような状況での期待を扱うのかを特定しなければならない点が明確になった。さらに顧客の「役割知覚」が重要となることが確認できた。これを基に,マーケティング研究,消費者行動研究,サービスマネジメント研究における期待に関する文献調査を行い,応用モデルの検討が概ね完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は,2016年度に2段階に分けて検討を行った基本モデル・応用モデルの検証のためのデータ収集と,研究成果の作成に取り掛かる。 1つ目のデータ収集について,当初の計画では1)総合小売企業,2)宿泊サービス企業,3)交通サービス企業の顧客に対して行うことを計画していた。しかし,日本ではこれらの産業だけでなく,ほかの産業も含めて広くセルフレジが普及していることと,分析に向けて大量かつ信頼できる消費者データを集める必要があること,調査に向けた調整に必要となる時間と予算の制約から,(株)インテージが保有するパネルに対するオンライン調査を実施することに変更する予定である。この調査では,上記の3産業のカテゴリー分けではなく,1)食品小売企業,2)専門小売企業,3)宿泊サービス企業,4)交通サービス企業の4つのカテゴリーを対象に実施する。なお,当初計画していた3産業の企業には,研究の実務的な貢献を明確にする際や,データ分析の解釈等を行う際の議論をより深く行うために,フィールド調査に協力を依頼する予定である。そして,データ収集に向けた質問紙調査の設計は,2016年度に行った文献調査を基に進める予定である。 2つ目の研究成果の作成については,まずは査読付きの海外学会発表としてAcademy of Marketing ScienceまたはEuropean Operations Management Associationへの投稿を計画している。これら学会では,技術に関連した消費者行動研究とサービスマネジメント研究への関心が高く,そこで理論的課題や分析・解釈の再確認が可能であると考えるため,そして論文として成果にする際に大いに貢献すると考えるためである。また,成果作成を推進するために,必要に応じて小売マーケティング研究やサービスマネジメント研究の研究者に助言を求めることも予定している。
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Research Products
(4 results)