2017 Fiscal Year Research-status Report
商業者の実践に基づく基礎理論の展開:参与観察およびライフストーリー調査の併用
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16K17195
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松田 温郎 山口大学, 経済学部, 准教授 (60632693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 商品取扱い技術 / 品揃え / 商人家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究業績は、論文1編、プロシーディング1編および学会発表2回である。 本科研の目的は、小規模小売業者の品揃えおよび商品取扱い技術に対して、ライフストーリーおよび参与観察を中心に調査・分析することで、それぞれの理論化を試みることである。 平成29年度における理論的な成果として、以下の仮説にたどり着いた。 まず、商品取扱い技術に関する仮説である。①商業者は日々の実践の中で多様な商品取扱い技術を選択・遂行する、②どのような商品取扱い技術を選択・遂行するかは商業者の人格・人間性に影響を受ける、③商業者はある商品取扱い技術を選択・遂行する中で自身の人格・人間性のある要素を強める、④商業者の人格・人間性のある要素が閾値を越えたとき、商業者の中に商人としてのアイデンティティが形成される、⑤商人としてのアイデンティティが形成されることで、商業者は特定の商品取扱い技術について熟達する、⑥商業者はその商品取扱い技術を中核としてフォーマットを構成する。 次に、同様に関係性に基づく商品取扱い技術に関する仮説である。1:商業者は日々の実践の中で多様なステークホルダーと関係性を構築する、2:どのようなステークホルダーと関係性を構築するかは商業者の人格・人間性に影響を受ける、3:商業者はあるステークホルダーと関係性を構築する中で自身の人格・人間性のある要素を強める、4:商業者の人格・人間性のある要素が閾値を越えたとき、商業者の中に商人としてのアイデンティティが形成される(条件1)、5:ステークホルダーと一定の関係性が築かれたとき、商業者はステークホルダーとの協働による商品取扱い技術の遂行・熟達が可能になる(条件2)、6:条件1および条件2を満たすことで、商業者はその商品取扱い技術を中核としてフォーマットを構成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は良好である。 調査・分析、および研究成果の公表それぞれにおいて当初の計画を順調にこなしている。 平成29年度の調査において、上記の新たな仮説を構築できたことから、今後も更なる研究の深化が期待できる。 また、これまでの研究経過において、当初想定していなかった事態は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策は次の2点が中心になる。 第1に、調査終了の目処をたて分析および研究成果の公表にエフォートを割いていくことである。第2に、前述の仮説を中心に研究を進め、新たな理論的成果の提案を進めることである。平成30年度は、これらの方策を踏まえた上で、論文1編および学会発表1回を成果目標として計画したい。 これらの方策は当初の研究計画と比べて大きな変更点はなく、特段の対応が必要な問題は生じていない。
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