2021 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Research on an Association between the Quality of Investment Forecasts and Corporate Governance
Project/Area Number |
16K17204
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
島田 佳憲 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (70733351)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 投資予想情報 / 投資効率性 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
企業による自発的情報開示は情報の非対称性を緩和させ,投資家の適正な資源配分の達成を通じて,企業の資金調達活動,そして最終的には資金投下活動にも影響を及ぼす.そこで,自発的開示の一種である投資活動に関する予想情報(投資予想情報)の開示に注目し,その開示の質と投資効率性の関連性を明らかにする研究を実施した.投資の種類としては,(a) 設備投資と (b) 研究開発投資,そして (a) と (b) を合算した (c) 全投資を取り扱い,それぞれに関して投資予想情報の質がどのように投資効率性と関係を有しているかを2003-2022年度の日本企業のデータを利用して実証的に分析した. 分析にあたって,投資予想情報の正確度(期初予想値と実績値との差の絶対値)を投資予想情報の質として定義した.また,投資機会(時価簿価比率および売上高成長率)などの要因から推定される最適投資水準と投資実績値との差の絶対値,つまり最適投資水準からの乖離度を投資効率性として利用した.自発的開示にかかる自己選択バイアスを調整して分析を実施した結果,投資予想情報の質が高い企業ほど,投資の効率性も高くなるという関連性が確認された. 加えて,コーポレート・ガバナンスの見地から,自発的な情報開示が事前の情報の非対称性である逆選択を緩和するのか,事後の情報の非対称性であるモラル・ハザードを緩和するのかという疑問に対しても一定の実証的証拠を示している.情報開示の特性として情報の歪みを示す過去の予想バイアス,経営者に対する規律づけとしてモニタリング効果を強化する機関投資家持株比率やエントレンチメント効果をもたらす役員持株比率を媒介変数として分析を実施した.その結果,投資予想情報の自発的開示は,事後的なモラル・ハザードではなく事前の逆選択を緩和することで,投資効率の改善に寄与していることが確認された.
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