2017 Fiscal Year Research-status Report
財務報告と企業内部の経営意思決定との相互作用に関する理論的・実験的研究
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16K17206
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三輪 一統 神戸大学, 経済経営研究所, 講師 (00748296)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 会計学 / 財務会計 / ディスクロージャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,情報開示と企業内部の情報環境との相互的な影響,およびその結果,企業内の経営意思決定にどのような影響が生じるのかについて検討することである. 平成29年度の実績は,以下のとおりである. 第一に,以前から継続して取り組んでいる,企業の情報獲得行動と情報開示との関係に関する研究について,第21回実験社会科学カンファレンスで報告をおこなった.本研究では,情報開示は企業の情報獲得行動(ゆえに企業内部の情報環境)を変化させることを通じて,生産の意思決定にも影響を与える可能性を明らかにしている.本研究プロジェクトに関連する論文2本について,1本は海外ジャーナルに投稿中,もう1本は改訂のうえ海外ジャーナルへの投稿を予定している. 第二に,企業の情報開示と生産意思決定との関係について,情報システムのバイアスという観点から理論的に考察した.とくに,不確実性の存在する複占市場において,企業が当該不確実性に関する情報を公的に開示する必要がある場合,事前的に,企業は情報システムにどのようなバイアスをかけるインセンティブを有するのかについて,先行研究を整理・拡張するかたちで検討した.本研究は,保守主義等,会計基準によってバイアスが外生的に与えられたときに,企業がその会計基準に対してどのように反応しうるのかについての議論に資すると考えられる.当該成果は,国内ジャーナルに掲載が決定している. 第三に,情報システムの設計と企業内の業績評価・動機づけとの関係について,キャリア・コンサーンのモデルを応用し,集約的な業績指標と非集約的な業績指標のどちらが望ましいのかについて考察している分析的研究をサーベイした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトでは,(1) 財務報告制度のあり方が,企業の生産活動に与える影響の分析,(2) 財務報告制度のあり方が,企業内の業績評価・動機づけに与える影響の分析という2つの課題を設定している.課題 (1) については,本研究プロジェクトの昨年度の成果である学術論文「新規参入企業に対するプレアナウンスメントの戦略的効果」が,日本ディスクロージャー研究学会の最優秀論文賞を受賞した.また新たに情報システムのバイアスという観点から,先行研究の理論モデルの整理・拡張をおこない,論文としてまとめた.課題 (2) については,予定していた先行研究のサーベイをおこなった.本研究プロジェクトは,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの最終年度となる平成30年度は,情報開示と生産意思決定との関係について,まずは海外ジャーナルに現在投稿中の論文の掲載を目指すとともに,改訂中の論文を仕上げて海外ジャーナルに投稿する.さらに,本研究プロジェクトのこれまでの研究成果をさらに発展させるかたちで,新たな理論モデルの構築に取り組む.これと並行して,実験のデザイン・実施にも取り組む.企業内の業績評価・動機づけについては,サーベイした先行研究を拡張することによって,企業外部に対する情報開示との関係およびその影響を分析できないか検討する.
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Causes of Carryover |
新規の経済実験を実施しなかったため,被験者への人件費・謝金として予定していた経費を執行できなかった.平成30年度に実施する経済実験のための被験者への人件費・謝金に組み入れて使用することを予定している。
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