2017 Fiscal Year Research-status Report
ケース・スタディに基づく日本的予算管理の研究―資源再配分メカニズムに着目して―
Project/Area Number |
16K17209
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
足立 洋 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (60585553)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 予算 / 管理会計 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,査読付学術専門誌に投稿するための論文の執筆作業を進めてきた。当該年度の執筆作業は,主に執筆のための文献の調査を中心とするものであった。その作業の中で明らかになったことを整理すれば,以下の通りである。 欧米の先行研究によれば,不確実性の高い事業環境においては,一度編成された当初予算が期中に不適合なものとなる可能性がある。そのため,経営会議での経営者と管理者の間の調整などを通して期中に予算を修正したり(Simons 1987),ローリング予測を実施するとともに行動計画を見直し(Lorain 2010)たりすることが行われることがある。また,部門間での管理者同士の調整を経て予算の前提となる資源配分を変更するという仕組みがとられることもある(Frow et al. 2010)。 だが一方,高不確実性下で予算管理を実施する場合には,予算目標の達成度によって業績評価をすることによる管理者へのモチベーション上の影響の問題もある(Hirst 1983)。この点,前述のケースでは,予算目標の達成度と人事評価の間の直接的な連携が行われていなかった。しかし,予算目標と業績評価をリンクさせることは,管理者を予算目標の達成に向けて動機づける重要なメカニズムの一つである。 そこでこの点の解決策について考察した研究をひも解くと,予算目標で業績評価を行うといっても実績数値をそのまま公式に当てはめるのではなく柔軟な評価方法をとる場合(Ross 1995),予算参加を積極的に行う場合(Shields and Shields 1998)などがある。その一方で,不確実性の高さゆえに予算による業績評価が管理者に与える心理的影響は,その管理者の曖昧性への耐性によって影響を受けるとの研究結果もある(Hartmann 2005)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は,文献調査を中心とした論文の執筆準備,そして過去に行ったインタビュー調査内容の精査を行った。その一方で,新しいリサーチサイトでのインタビュー調査については予定よりも手配が遅れている。このため,リサーチサイトの数の不足から,研究目的である資源再配分の柔軟性の担保メカニズムの類型化が十分にできていない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,新たなリサーチ・サイトの確保と,そこでの研究目的に沿ったインタビュー調査に注力する予定である。そのために,ケース・スタディの手法を採用している他の管理会計研究者や,地元広島の経営者とのネットワーク構築に力を入れる。 なお,その新たなインタビュー調査によって得られたデータを精査し,研究目的である資源再配分のメカニズムの類型化を行って論文を執筆するためには1年半~2年程度の時間を要すると考えられる。そこで,本研究課題の研究機関の延長を計画している。
|
Causes of Carryover |
本研究課題を進めるに当たり,新しいリサーチサイトでのインタビュー調査については予定よりも手配が遅れている。このため,リサーチサイトの数の不足から,研究目的である資源再配分の柔軟性の担保メカニズムの類型化が十分にできていない状況である。このことにより,本来インタビュー調査や学会・研究会報告などに利用する予定であった研究費が余っている状況である。 そこで平成30年度は,新たなリサーチ・サイトの確保と,そこでの研究目的に沿ったインタビュー調査に注力する予定である。そのため,インタビュー調査に伴って発生する旅費を本研究費からねん出する予定である。 なお,その新たなインタビュー調査によって得られたデータを精査し,研究目的である資源再配分のメカニズムの類型化を行って論文を執筆するためには1年半~2年程度の時間を要すると考えられる。そこで,本研究課題の研究機関の延長を計画している。これに伴って,現在の残高を平成30・31年度の2年をかけて調査や学会・研究会報告の旅費に活用する予定である。
|
Research Products
(2 results)