2017 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉法人の内部留保をめぐるアカウンタビリティ構築プロセスの研究
Project/Area Number |
16K17218
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中澤 優介 愛知学院大学, 商学部, 講師 (30755856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アカウンタビリティ / アカウンタビリティ・レジーム / 暴力性 / 社会福祉法人制度改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会福祉法人での内部留保の会計処理を取り上げ、この会計処理の設定によってアカウンタビリティが新たに構築されるプロセスを研究している。 本年度は社会福祉法人制度改革のもと、内部留保の処理方法も含め、様々な制度変更のもとで取り組まれた実務の動向が明らかとなるタイミングであった。したがって、当該制度改革の内容に関して詳細に検討し、その改革はどのようなアカウンタビリティの履行を志向するものであるのかを明らかにする研究を実施し、その成果は学会にて報告した。 さらに、上記の研究を通じて、社会福祉法人制度改革では透明性が志向されていることが明らかになった。したがって、当該制度改革において透明性が志向されていることをアカウンタビリティの観点から詳細に分析するために、透明性・ガバナンス・アカウンタビリティの間の関係性に焦点を当て、このうち透明性と結びつくアカウンタビリティの形態について研究を進め、その成果は論文として発表した。当該研究では、透明性によるガバナンスの維持・達成には、不透明性を前提とするアカウンタビリティの形態が必要であることを明らかにし、さらに事例として社会福祉法人制度改革を取り上げ、社会福祉充実計画を通じたアカウンタビリティの履行が、この不透明性を前提とするアカウンタビリティの形態たり得ることを示した。 以上の研究業績はいずれも、交付申請書の本年度の研究実施計画において研究対象とした社会福祉法人のアカウンタビリティの在り方の変化や「ズレ」について、制度的側面および理論的側面から分析を行った研究として位置付けられる。これは当該申請書の「研究の目的」で示した「内部留保に関する会計処理法の導入によって、社会福祉法人にもたらされるアカウンタビリティの変化や「ズレ」」を明らかにすることに繋がるものであり、この点においてこれらの研究は意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査に基づく研究は順調に進んでいる。なお、アカウンタビリティ履行を分析対象とする際に、その行為だけに焦点を当てるのではなく、ガバナンスといったより大きな視点・枠組みからアカウンタビリティを捉えることの重要性が研究を進めるうちに明らかとなったため、この点に研究の焦点を移した。したがって、計画では本年度において実施予定であった医療・介護領域において想定されるアカウンタビリティの国による違いや歴史的背景の違いに焦点を当てた研究を実施予定であったが、医療・介護領域において志向されるガバナンスという観点からの分析を重点的に進めた。 また、社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や内部留保に関する新たな会計処理法が設定されるプロセスに関する調査においても、文献調査は順調に進んでいるが、インタビュー調査は本年度においても調整が難航しており、この点においてやや遅れが生じているといえる。なお、インタビュー調査は研究計画上も複数年度に渡って実施する予定であるため、今後も継続的に実施に向けて調整を行っていく。さらに、インタビュー調査において明らかにしようとしていたことを改めて検討し、文献調査でも進展が見込まれるものは文献調査を通じて研究を進めるなどの対応を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画していた理論研究については順調に実施している。当該研究に関しては次年度も継続的に発展・深化させ、さらに本年度から実施しているガバナンスという枠組みのなかからアカウンタビリティ履行を分析する研究も踏まえ、その成果の論文化や学会での報告を予定している。さらに次年度は、内部留保の会計処理法導入に関して、本年度まで継続的に実施している文献調査に加えて、社会福祉法人に対するインタビュー調査も実施していく。これらの研究調査によって得られた知見については、学会やその他の研究会でも積極的に報告を行い、最終的には論文化を目指す。なお、インタビュー調査が難航しているため、そこでの調査結果をもとに実施予定であった質問票調査は実施せずに、交付申請書の「研究の目的」に記載している明らかにする事項について調査していく。このような計画の変更に対しては、研究の焦点を個々の社会福祉法人に絞り、包括的な分析ではなく詳細な分析を志向していくことによって対応していく。
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Causes of Carryover |
理由:本年度も昨年度と同様、社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や、新たな会計処理法が設定されるプロセスに関してインタビュー調査を実施する予定であったが、当該調査の調整が難航したことにより、昨年度より継続的に実施しており成果も出ている理論的研究を優先的に進めた。したがって、主に旅費において未使用額が生じた。また、インタビュー調査の調整が難航していることに起因して質問票調査も実施できておらず、この点についても未使用額が生じている。
使用計画:インタビュー調査は研究計画上も複数年度に渡って実施する予定であり、また研究の方針としても個々の社会福祉法人に焦点を絞っての分析を展開していくため、次年度においても継続的に調整を行い、実施を見込んでいる。さらに次年度は本年度以上に学会およびその他の研究会での報告を行う予定である。したがって、次年度使用額はそれらの旅費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)