2019 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉法人の内部留保をめぐるアカウンタビリティ構築プロセスの研究
Project/Area Number |
16K17218
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中澤 優介 愛知学院大学, 商学部, 准教授 (30755856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アカウンタビリティ / 倫理 / 倫理的暴力 / 透明性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会福祉法人での内部留保の会計処理を取り上げ、この会計処理の設定によってアカウンタビリティが新たに構築されるプロセスを研究している。 アカウンタビリティの構築プロセスを研究するため、透明性・ガバナンス・アカウンタビリティという3つの要素の関係のなかでアカウンタビリティを捉えるという方向性でこれまで研究を進めてきたが、前年度に進めていたガバナンスとアカウンタビリティの関係性に焦点を当てた研究においては十分な成果を得られることができなかった。また、研究を進めるうちに、アカウンタビリティを要素とする関係性の分析を実施する前に、まずは現状での「アカウンタビリティの履行」という行為が置かれている状況やその在り方を詳細に分析することが必要であるという考えに至った。 以上のことから本年度は、アカウンタビリティがどのような状況で履行されているのかに焦点を当てた研究を実施した。この研究は、交付申請書「研究の目的」に記載の3つの研究目的のうち、「アカウンタビリティの履行において、想定された責任関係からの「ズレ」が生じる問題の構造」を明らかにする研究に位置付けられるものである。 具体的には、アカウンタビリティに対する要求が孕む説明主体に対する暴力性に焦点を当て、この暴力性を低減するアカウンタビリティの在り方としての「戦略的アカウンタビリティ」の可能性を考察する研究や、アカウンタビリティの要求の高まりの背後に存在する透明性への要求の高まりに関して、先行研究において示される、この透明性に疑義を示した(不透明性を前提とした)アカウンタビリティ概念の実践における展開可能性を考察する研究を実施した。なお、これらの研究において得られた成果は、学会にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
文献調査に基づく理論研究については、前年度において進捗の遅れが生じたため、本年度はその遅れを取り戻すべく、理論研究に多くの時間を費やした。その結果、理論研究においては一定の成果を得ることができたものの、実施予定のインタビュー調査に関しては、インタビュー調査先の選定や調整が難航していることもあり、当初の実施予定より大幅な遅れが生じている。 なお、インタビュー調査は研究計画上も複数年度に渡って実施する予定であるため、今後も実施に向けてのインタビュー調査先の選定・調整を継続的に行っていくが、現在は新型コロナウィルスの影響もあり、インタビュー調査が非常に難しい状況である。また、この新型コロナウィルスの影響がいつまで続くのか予測ができないため、次年度を通じてインタビュー調査が実施できないという事態が懸念される。
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Strategy for Future Research Activity |
計画していた理論研究については、前年度の遅れを取り戻すべく、研究に充てる時間の多くを費やしたため、着実に進展させることができ、一定の成果も得られた。当該研究に関しては本研究課題の根幹をなすものであるので、本年度に得られた成果を深化・発展させる形で、次年度の研究成果に結び付けていく。具体的には得られた成果の論文化や学会での報告を予定している。なお、本年度得られた研究成果については、現時点では学会報告という形でのみの発表となっているので、まずは本年度の研究成果を論文化することから着手する予定である。さらに次年度は、内部留保の会計処理法導入に関して、文献調査に加えて、社会福祉法人に対するインタビュー調査も実施する予定である。これらの調査によって得られた知見については、学会やその他の研究会でも報告を行い、最終的には論文化を目指す。 しかし、新型コロナウィルスの影響もあり、インタビュー調査が困難な状況が長期間に渡ることも予想されることから、昨年度決定したように、交付申請書の「研究の目的」に記載の3つの研究目的に関する調査を実施する際、文献調査をその主たる方法として位置付ける。この研究計画の変更に対しては、文献調査に基づいて現在進めている研究における、現状での「アカウンタビリティの履行」という行為が置かれている状況やその在り方の詳細な分析をもとに導出予定のアカウンタビリティの規範的な在り方と、文献調査をもとに明らかにする内部留保の会計処理法導入後の社会福祉法人のアカウンタビリティの現状とを比較分析する、という研究のプロセスをとることによって対応していく。
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Causes of Carryover |
理由:本年度は社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や、新たな会計処理法が設定されるプロセスやその設定によって社会福祉法人が想定するアカウンタビリティにもたらされる変化に関してインタビュー調査を実施する予定であったが、前年度に引き続き当該調査先の選定・調整が難航した。また、研究成果をはじめとする研究報告は学会やその他研究会で実施したが、本年度の終わりにかけては新型コロナウィルスの影響もあり、研究会の開催が中止になるといった事態にも見舞われた。これらのことにより、一昨年度の時点でインタビュー調査の遅れのために実施を取り止めた質問票調査にかかる費用に関する未使用額に加え、主に旅費において未使用額が生じた。
使用計画:実施のための選定や調整が難航しているが、インタビュー調査は研究計画上も複数年度に渡って実施する予定であるため、新型コロナウィルスの影響が収束ののち、次年度も継続的に選定・調整を行い、実施する予定である。さらに、得られた研究結果について学会およびその他の研究会での報告を行う予定である。新型コロナウィルスの影響がいつまで続くのかによって先行きが見通せない部分もあるが、次年度使用額はそれらの旅費に可能な限り充てることとしたい。また今後の国際学会での発表も見据え、研究成果の英訳にかかる翻訳料や作成した資料の英文校正にも次年度使用額を充てる予定である。
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Research Products
(2 results)