2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17219
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
曽場 七恵 名古屋学院大学, 商学部, 講師 (50756757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公会計 / フランス / M14 / EPCI |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はフランス地方公共団体における公会計制度の改革並びに改革後の動向についての調査研究を実施した。フランスでは1982年の地方分権化および地方分散化という大規模な行財政改革が近年の公会計制度に大きな影響を与えてたという経緯がある。また、フランスの行政区画はコミューン(市町村レベル)、デパルトマン(都道府県レベル)、レジオン(州レベル)の階層構造をしており、これらの区画毎に会計制度が整備されている。最も古くから存在するコミューンの会計制度の改革に着目すると、1994年に「M14」と称する会計規程が制定され、公会計に企業会計的な概念を導入することとなり注目を浴びてきた。 当該年度の研究課題として「M14」施行から10年が経過したことで地方公共団体における公会計制度がどれ程地域に根付いたのか、さらには企業会計的手法の導入によって地域にどのような変化が生じたのかを調査することを目的とした。 フランス政府が各種ウェブサイトにて公表する資料並びに文献精査に基づいた調査の結果、小規模自治体であるコミューンでは企業会計的手法の導入はその精密度を導入する意義と現場の実務的負担等、改革に伴う諸コストの増加が実務との兼ね合わず年々簡易化の方向へ改正され、従来の会計制度に復刻する傾向があることが判明した。その代わりに複数のコミューン同士が共同で行政事業を執り行う組織団体の設立並びに活用が活発化し、そこでの会計制度の整備がなされている。さらには、大規模行政区画としてのレジオンが地方の行財政の主軸を担えるよう大規模な法改正もなされており、フランスの地方公共団体は「共同体意識」に基づく行財政改革が実施されていることが判明した。 以上の研究成果を国際学会、日本会計研究学会および戦略会計研究会において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度に実施したフランス中央政府における公会計制度の改革動向を現地調査した結果と日本の状況とを比較検討した結果をポルトガルで開催された公会計の国際学会にて研究報告を行った点に関しては、研究計画通りに進行することができた。 しかしながら、当初の研究計画では平成29年度はフランスの地方公共団体並びに公会計研究者のもとへ赴きインタビュー調査を実施する予定であったが、申請者の妊娠に伴い延期することとなり、上記調査が叶わず進捗状況は遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、第一にフランスの地方公共団体における現地インタビュー調査を実施することが挙げられる。そのため、本研究課題は延長申請を申し出ている。 当該調査の後、フランスの中央政府の公会計制度の改革と地方政府のそれとを比較し、フランスの公会計制度の方向性を検証する。本研究により、フランスの公会計制度に対する意向は日本も含め他国の公会計改革の動向とは異なり、公的部門に企業会計の概念の導入に注力する「企業会計化」に向かっていないという特殊な事例である。その要因を中央政府と地方政府の各領域の視点から検討する。 日本の公会計制度の改革は他の先進諸国と比較すると、改革を大きく謳うわりに世間や現場に浸透せず、結果として非常に遅れていると評価されている。フランスの公会計改革の動向が、日本のこのような現状を打開するひとつの参考になることを期待する。
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Causes of Carryover |
平成29年度中に申請者の妊娠が発覚し、当初予定していた海外調査研究を延期したことが理由である。これに関しては研究期間延長の申請をしており、産休育休復帰後に実施予定である。
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