2018 Fiscal Year Research-status Report
共生型マルチエスニック・コミュニティ形成の社会的条件―ロサンゼルスを事例として
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16K17225
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
土田 久美子 駒澤大学, 文学部, 講師 (20553035)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エスニシティ / エスニック・マイノリティ集団 / エスニック・タウン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、先行研究のレビューと事例調査を実施した。まず先行研究について特に重点を置いたのは、異なる人種・エスニック集団によって行われる運動についてである。 そのうえで、年度の後半は事例調査を実施した。特に事例調査では、調査研究対象である日系集団・コミュニティ組織と他集団との間の関係構築を把握することに焦点を置いた。というのも、本研究課題に関する調査を開始して以降、日系のエスニック・タウンでは再開発をめぐっていくつかの変化が起きており、そのなかで日系コミュニティが他集団との間の関係をどのように形成しながら再開発のイニシアティブを握るのかを把握する必要があると考えたからである。そうした他集団のなかには、2000年代以降に存在が顕著になっていた韓国系だけではなく、開発業者や行政も含めより多様な集団が含まれる。 同時に他集団との関係構築を考える際に、エスニック・タウン以外の側面にも目を向けた。それは、運動組織としてのネットワークの拡大である。従来から、他集団との間の関係構築は事例において鍵であった。その一つは、上記と関連して、自分たちのエスニック・タウンの維持と発展についての知識の共有と互恵的関係という形で確認することができた。さらにはそうしたマルチ・エスニックな運動は、近年活発であったアメリカ社会でのジェンダーに関わる運動に影響を受けており、社会的課題の解決に向けた運動にも発展していた。今後は、こうした新しい変化を捉えつつ分析を進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況については、やや遅れていると言わざるを得ない。その理由としては、研究対象地の一つであるロサンゼルス・リトルトーキョー地区をめぐる変化が活発であるために、現状の把握(歴史的経緯、変化に関わる諸アクターの整理など)に時間を要するからである。さらには、ここ近年のアメリカ社会の政治的な変化やそれに反応する市民社会レベルでの変化によっても、対象集団の活動は影響を受け変化することもまた、現状把握に時間を要する一つの原因となっている。 一方で、先行研究のレビューや事例に関しての現状に至るまでのプロセスについてはすでに整理や分析をほとんど終えているため、この点に関しては当初の計画どおりに順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究にあたっての推進方策としては、次のことを行う予定である。事例に関する調査については、継続してエスニック・タウンをめぐる諸アクターたちへのインタビューを行う。特に、昨年度の調査のなかでわかってきた一つは、自分たちのエスニック・タウン内での共同・共生関係を超えた、他エスニック・タウンとのネットワークについても明らかにしていきたい。同時に、エスニック・タウンの維持と発展を超えたマルチ・エスニックな運動という側面についても明らかにする予定である。それによって異なる集団間の共同・共生という視点から改めてマイノリティ集団間の関係構築について整理したい。これら研究成果については、学会報告はもちろんのこと、学術論文としてまとめ、発表する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、研究代表者の所属先が2018年度に変わったために海外調査を実施する状況を整えることが難しかったことがある。そのため、よりよい研究調査の実施と成果の発表ために次年度(2019年度)まで課題に関わる研究を継続することにした。次年度は、調査の継続とフォローアップをロサンゼルスで行い、それに基づく成果発表(国内外の学会と論文の発表)を行う予定である。
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