2017 Fiscal Year Research-status Report
戦前満洲における多文化的公共性の比較メディア史的研究
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16K17226
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
白戸 健一郎 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80737015)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 満洲 / メディア / 近現代史 / 満鉄 / 満洲国 / 排日運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、戦前満洲のメディア史を調査するため、中国近現代史、メディア史及び満洲国期の先行研究との本研究に関係する資料の読解と整理を進め、そこからの展開可能性を探った。資料収集としては満鉄発行の『調査月報』や満洲文化協会発行の『満蒙』などだけではなく、『満洲日日新聞』などの新聞記事を蒐集した。また、排日運動推進の主体となった外交後援会に着目し、外交後援会に関する外務省外交史料館などにおける公文書を収集・整理し、分析を進めた。特に、教育権回収運動に着目し、その前後の現地の日本語及び漢字新聞の新聞記事を蒐集した。ここからいかにして政治的意思表明をおこない、それをどのような頻度で実施していたかを知ることが出来た。これはこれまで未開拓の戦前排日運動のメディア史という本研究のアプローチが遂行可能であることを示している。さらに、排日運動への対抗運動として生まれた満洲青年連盟に関する資料を蒐集、整理した。これに加えて、平成29度は満洲問題を諸外国がいかに認識していたかを調査するため、内閣情報部の情報宣伝研究資料に着目し、『秘 外国新聞に現はれたる支那事変漫画』を復刻し、その解説を執筆した。これにとどまらず、同時代の日本における政治的意見形成とメディアの関係性を考察するため、戦間期のメディア出身議員についての予備的調査を進めた。両者は空間は異なるが、類似する概念で分析することが可能な対象であると考える。これについては、「普通選挙制度体制下におけるメディア政治家に関する予備的考察」として『京都メディア史研究年報』に投稿して受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29度は国内資料収集を主としておこない、排日運動や教育権回収運動に関する膨大な資料群を収集し、整理した。それに加えて、諸外国の認識を調査した内閣情報部の『秘 外国新聞に現はれたる支那事変漫画』の復刻と解説を執筆し、さらに、同時代日本の「普通選挙制度体制下におけるメディア政治家に関する予備的考察」を執筆した。このことは次年度以降の研究を進展させていく上で、重要な作業になるため、研究計画も順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて今後は国内外、とくに国外の資料収集を進め、これまで整理してきたものを、積極的に学会発表や学術雑誌に投稿し、研究成果を発表する。主として、東アジア近代史学会やメディア史研究会、日本マス・コミュニケーション学会を想定している。
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Causes of Carryover |
平成29年度は関東圏における資料収集を主として進めたため旅費の支出がなく、次年度使用額が生じた。次年度に国外での長期の資料収集を既に予定しており、その外国出張として使用する予定である。
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