2016 Fiscal Year Research-status Report
「子どもの貧困問題」の構築過程と社会的養護問題の変容
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16K17233
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
土屋 敦 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 准教授 (80507822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会的養護 / 子どもの貧困 / 児童養護施設 / 乳児院 / 里親委託 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に当たる平成28年度は、子どもの社会的養護に関する資料収集、メディアにおける表象の分析、およびフィールドワークによる予備調査を行った。成果は、学会報告2本および共著書2冊に分けて公表した。メディア表象分析においては、特に1960年代後半から1980年代後半までの新聞記事を分析の対象にしながら、そこでの「子ども」と「貧困」の結びつきに関する系譜を検証した。この成果は土屋他著2016『子どもと貧困の戦後史』青弓社にまとめた。 また、高度経済成長期以降1980年代までの社会的養護(主に施設養護)における育児規範の変遷に関しては、特に施設養護の専門家による言論活動と施設職員の聞き取り調査から、その系譜を明らかにした。その成果は、土屋他著2016『<ハイブリッドな親子>の社会学ー血縁へのこだわりを解きほぐす』青弓社にまとめた。 両成果とも、日本の施設養護を細部に渡り歴史的に社会学の見地から明らかにした初の研究成果であり、現在子どもの貧困問題や施設養護を初めとする社会的養護の変革期にある日本において、その歴史的な系譜を知る上での貴重な検討材料を提供している。 また、施設養護に関するフィールドワークでは、7か所の児童養護施設と1か所の乳児院での参与観察および施設職員10名への聴き取り調査を行った。同成果は平成29年度に成果として公表する予定である。同調査は、現在特に日本の施設養護に対する批判と3度の国連勧告がなされ、里親委託率の上昇が政策課題となっている現在の状況にあって、極めて貴重な資料を提示する研究になるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に実施されている。当初初年度に計画をしていたタスクをほぼ予定通り終え、さらに複数の施設調査を実施できたことは平成28年度の大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、さらに児童養護施設や乳児院における調査件数を増やすとともに、NPO調査などを加えて問題を多角的な見地から検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に行う予定であったフィールドワーク調査を先方の都合で4月に予定変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
施設調査を4月以降集中的に実施し、随時研究を進める。
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