2017 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域における共助の論理の検討による包括的ボランティア論の構築に関する研究
Project/Area Number |
16K17236
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
吉武 由彩 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (70758276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボランティア / 相互扶助 / 共助 / 過疎地域 / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ボランティアへの期待の高まりの中、都市部ボランティア活動に焦点を置く既存研究に対し、過疎地域における共助の論理の検討による、包括的ボランティア論の構築を目的とする。そのために、主に過疎地域における高齢者を支える共助を取り上げ、その実態と変容、論理について実証研究を行う。さらには、既存の都市部ボランティア研究や、非対面的ボランティア研究などとも比較検討することにより、包括的ボランティア論の構築を目指すものである。 2017年度は、昨年度より継続して、高齢化や人口減少、世帯の小規模化が進む西日本地区の過疎地域において福祉関係者や住民への聞き取り調査および参与観察を実施した。複数地区への調査を行う中で、活発な活動の継続には、高齢化率の低さなどよりも、丁寧な活動趣旨説明やリーダーの役割が重要であることを確認した。他方で、近年、活発な活動が行われている地域でも、寄付額の減少などの困難も見られた。自主財源の確保は、住民主体の地域福祉活動の推進にあたって重要であるが、寄付額の増加のためには地区外に住む人々へも地区の活動の実態を伝えていくことが重要と考えられる。加えて、これらの過疎地域におけるボランティア的行為について、行為の担い手と受け手とが直接接点を持たない非対面のボランティア的行為と比較するため、非対面のボランティア的行為の古典的研究についても再検討し、非対面のボランティア的行為の成立要件を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は過疎地域における予備的調査の実施や、包括的ボランティア論構築のための関連文献の整理および他領域のボランティア的行為の補足調査などを実施していた。2017年度は、継続して過疎地域における福祉関係者や住民への聞き取り調査および参与観察を実施した。当該地域における複数地区において福祉関係者や住民など様々な人々へ調査を行う中で、過疎地域において活発な住民主体の地域福祉活動が展開される制度的側面や意識的側面について調査を行い、活発な活動の継続には、高齢化率の低さよりも、丁寧な活動趣旨説明やリーダーの役割が重要であることを確認した。また、活動継続における困難についても聞き取り調査を行っている。加えて、非対面のボランティア的行為の古典的研究についても再検討し、非対面のボランティア的行為の成立要件を指摘した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、主に以下の2点より研究を実施する。(1) 過疎地域における高齢者を支える共助について、その実態と変容、論理について2018年度も継続して調査を行う。さらに、これまでに実施した調査のデータおよび2018年度に実施する予定の調査のデータをもとに、研究のまとめを行う。高齢者の生活を支える諸団体や担い手への聞き取り調査を行い、特に近年の寄付額減少やそれによる活動継続の問題、住民と地域外の人々との関係性など、近年の活動変容と今後のあり方について調査する。(2) 既存の都市部ボランティア研究や、非対面的ボランティア研究などとの比較検討のために、引き続き文献検討やその他のボランティア的行為の補足調査を実施する。以上により、他のボランティア的行為と比較しながら、過疎地域におけるボランティア的行為の実態と変容、論理等についてまとめを行う。
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