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2016 Fiscal Year Research-status Report

香港のフードアクティヴィズムと民主化運動

Research Project

Project/Area Number 16K17239
Research InstitutionMusashi University

Principal Investigator

安藤 丈将  武蔵大学, 社会学部, 准教授 (50434220)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords社会運動 / 農と食 / 香港 / 民主主義
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、事前の調査で進めていた、香港のフードアクティヴィズムを読み解くうえでの枠組みについて報告を行なった。日本や欧米諸国の事例や理論をもとに、食と農に関する社会運動の研究を軸にして、そこにローカリズムと民主主義の理論的な知見を関連させながら、分析の枠組みづくりを進めてきた。
研究成果は、主に次の三つについて論じた。一つ目は、食や農は、いかなる社会的な背景のもとで、社会運動のイシューとして現われたのかについてである。特に1960年代後半におけるニューレフト運動のインパクトを受けて、1970年代以降、公害のような工業化の成功ゆえに生じた問題に対する認識が広がった。進歩や経済成長のような工業社会に支配的な価値観に対する反省が共有されるのに伴って、社会運動の対象が、食と農という人びとの生存に関わる領域へと拡大していくプロセスを考察した。
二つ目は、コミュニティにおける民主主義についてである。これは、トクヴィル以来、政治学の古典的なテーマであり続けており、その歴史的な変化を踏まえながら、今日における状況を考察した。コミュニティの自治は、市民の動員を促すが、ネオリベラリズムが進展する状況の中で、それがいかに機能するようになっているのかに注目した。
三つ目は、食と農の領域における民主主義を求める運動のトランスナショナルな性格についてである。特にアジアの国境を越える農民の連帯に焦点をあてながら、異なる歴史的な文脈に置かれながらも農を営むという点では共通する人びとが、ナショナリズムを批判的に捉えながら、連帯の論理をいかにして獲得していったのかを考察した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度は、香港と台湾に出張して、事前に進めていた、菜園村生活館のフードアクティヴィストたちへの取材を継続した。取材を通して、彼らを取り巻く資本主義と植民地主義の状況に対する理解を深める必要性を痛感させられ、取材対象を拡大するのではなく、文献調査に取り組み直した。調査の取材計画からの遅れは、この点に起因する。
特に、植民地主義的な状況は、大陸中国と香港との間に複雑に張りめぐらされており、英語、中国語、日本語の文献をもとに、植民地主義の交錯についてより細やかな理解をするようにしてきた。植民地主義の問題は、香港における自治としての民主主義の要求と関わっている。この点を踏まえて、私は、フードアクティヴィストたちが、脱植民地化としての自治の実践を農という営みを通して実践しているという理解に至った。脱植民地化という観点を挿入しながら、事前調査の枠組みの整理をし直し、今後の取材に備えるというところまで研究は進捗した。

Strategy for Future Research Activity

2017年度は、前年に整理したフレームワークをもとに、実際に現地取材を進める予定である。生活館のアクティヴィストたちに対してインタビューをすることはもちろんだが、可能な限り長い時間かけて対象に同行することに努める。農法、消費者とのつながり方、生産グループ内の関係性に対する理解を深めることで、彼らの言葉の背景にある日常的な実践に迫る。また、ローカリズムを主張しながら、排外主義的な言説を唱える人びとにも注目し、生活館のアクティヴィストの議論との共通点と相違点を検証する。
日本や台湾、中国大陸などのアクティヴィストにも機会を見て訪問調査を進め、香港のフードアクティヴィズムの展開を北東アジアの空間の中でとらえるように努めたい。

Causes of Carryover

当初の計画では、初年度にPCの購入を予定していたが、すでに所有しているPCを引き続き使用するように努めたため、購入を延期することにした。また、業務の都合で出張期間が予定よりも短くなった。以上の理由から、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

現在使用中のPCの老朽化が進んでおり、次年度中にはPCを購入することになると思われる。また、2017年度の業務の状況から見て、次年度には本年度よりも頻繁に現地取材に行くことが可能であり、出張費用が生じることが予想される。以上の費用の一部として使用予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2016

All Presentation (3 results) (of which Invited: 3 results)

  • [Presentation] 松下圭一「地域民主主義」論の活かし方2016

    • Author(s)
      安藤丈将
    • Organizer
      日本政治学会年次大会
    • Place of Presentation
      立命館大学(大阪府・茨木市)
    • Year and Date
      2016-10-01
    • Invited
  • [Presentation] 『グローバル・ヒストリーとしての「1968年」』第11章2016

    • Author(s)
      安藤丈将
    • Organizer
      冷戦研究会
    • Place of Presentation
      東京大学(東京都・渋谷区)
    • Year and Date
      2016-06-25
    • Invited
  • [Presentation] ポスト「一九六八年」における知の探求2016

    • Author(s)
      安藤丈将
    • Organizer
      日本近代文学会春季大会
    • Place of Presentation
      亜細亜大学(津京都・武蔵野市)
    • Year and Date
      2016-05-28
    • Invited

URL: 

Published: 2018-01-16  

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