2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17239
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
安藤 丈将 武蔵大学, 社会学部, 教授 (50434220)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 香港 / 食と農 / 社会運動 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、8月と3月に現地調査を行い、広深港高速鉄道反対運動(反高鉄運動)、菜園村生活館、その他のフードアクティヴィズムに関する文献調査と取材を行った。また、調査3年目ということもあって、研究成果も出すことができた。もっとも長文のものとしては、武蔵社会学会『ソシオロジスト』に反高鉄運動の遺産についての論文を執筆した。 その論考の中では、以下の四つの作業をしている。第一に、反高鉄運動を歴史的文脈に位置づけた。それを孤立した出来事として捉えるのではなく、一九九七年に中国に返還された後の香港の市民社会の展開の中に埋め込んだ。第二に、「反高鉄」の理由を考察した。それは、香港の「中国化」に対する反発だけでなく、資本主義的開発という香港における支配的なイデオロギーに対する根源的な批判を含んでいた。第三に 非暴力直接行動の創出という運動の遺産を明らかにした。とりわけ「苦行」と呼ばれるユニークな路上の行動が、ローカルな運動とグローバルな運動との交錯の中から生まれたことを示した。さらに、「苦行」という政治表現の民主主義的な含意を考察した。第四に、運動のもう一つの遺産である農の発見について論じた。菜園村民の暮らしに刺激を受けた支援者たちが、農に脱資本主義的開発の生活と社会の原則を見いだしたことを示した。 この論文以外にも、川端浩平、安藤丈将編『サイレント・マジョリティとは何か』(ナカニシヤ出版)の八章に、菜園村生活館についての論考を執筆した。また、小規模家族農業ネットワークジャパン編『国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」』に香港の農民についての原稿を執筆した。武蔵社会学会の年次大会でも反高鉄運動について報告し、東アジア社会学会の大会では市民的不服従の報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は所属機関における研究専念期間であったため、計画以上に研究が進展したが、2018年度は通常業務に戻り、研究時間も大幅に減ったため、進度が遅れた。しかし、前年度に大きな進捗があったため、トータルで見るとまだ予定よりも進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査期間は残り1年なので、成果を出していきたい。まず、香港の農民の事例を見ながら、社会運動としてのパーマカルチャーの可能性と問題を考察する論文を執筆したい。また、もし年度内に間に合うならば、非暴力直接行動や市民的不服従の理論的な研究を整理しながら、香港における直接行動を考察する論文も執筆したい。 次年度も、8月と3月に現地調査を行い、菜園村生活館、その他のフードアクティヴィズムに関する文献調査と取材を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
香港への現地調査の一部の交通費を所属機関のプロジェクト基金から支出することができたため、その分は、次年度、香港の農民を招聘する費用として使用する予定である。
|
Research Products
(8 results)