2020 Fiscal Year Annual Research Report
Food activism and democratization movements in Hong Kong
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16K17239
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
安藤 丈将 武蔵大学, 社会学部, 教授 (50434220)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会運動 / 香港 / 食と農 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、香港のフードアクティヴィズムの歴史、文化、ネットワークを明らかにしたことにある。まず、歴史である。菜園村生活館という農場は、返還後の民主化運動の中から生まれた。特に、2005年の反WTO運動と2009-10年の反高鉄運動が資本主義的開発に対する批判的な見方を形成するきっかけになったことを考察した。加えて、私は、農が市民社会におけるポスト開発の暮らし方の追求の文脈で発見されると同時に、社会運動における非暴力的抵抗の手段の追求の文脈でも支持されたことを跡づけた。 次に、文化である。菜園村生活館に象徴される「社会運動としての農」は、「中国化」に伴う開発の進展の中で困難な状況にあった。その中で農民を政治的に主体化させることを可能にしたのが、「永續農業(パーマカルチャー、以下P C)」の実践哲学である。PCは、自然環境のみならず、人間がつくり出した農と社会運動による拘束、さらには社会・政治制度(資本主義と植民地主義)による拘束から農民たちを解き放つ展望を与えていることを見ていった。さらに私は、生活館の農が農民をエンパワーメントするだけでなく、抵抗の歴史の想起、顧客、さらにはボランティアへの支援の呼びかけという日常的な実践と結びつくことで、私事化されることなく社会変革の実践としての性格を担保している。 最後に、ネットワークである。私は、香港におけるPCのネットワークをたどりながら、農に関する知識や技術、価値観やアイデンティティを共有する実践者の存在を明らかにした。農民間の関係だけでなく、農民と顧客の関係も調査した。農民は顧客に生命の再生産の源を提供し、一方で顧客は定期的な購入を通して農民を支えている。他方、顧客の支援の行動は、農民が再生産可能な程度には届いておらず、農民は農の「脆弱性」(ジェームス・スコット)にさらされていることを明らかにしていった。
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Research Products
(1 results)