2016 Fiscal Year Research-status Report
現代日本の都市計画における知識基盤型権力構造の社会学的研究
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16K17243
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
植田 剛史 愛知大学, 文学部, 助教 (30709267)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市 / 空間 / 計画 / 権力 / 統治性 / 専門知 / 技術 / マテリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ポスト新自由主義段階の都市空間の統治をめぐる問題構制について、1.専門知識・技術と統治性に関する理論的研究と、2.工学的都市計画知識・技術を基盤とした権力作動の実証的研究との相互連関のなかで明らかにすることを目指す。採用初年度は、研究全体の基盤整備と1.に重点を置き、具体的に以下の研究を実施した。 1.専門知識・技術と統治性に関する理論的研究:Actor Network Theoryに触発されて非人間中心主義的アプローチの都市研究への応用を試みるAssemblageアプローチと従来の政治経済学的アプローチとの間で展開されてきた理論的論争、および統治性とマテリアリティをめぐる近年の理論動向について、関連する文献・資料を収集し、都市空間の統治に迫る政治経済学的アプローチの枠組みに、工学的都市計画知識・技術の権力作動と都市のマテリアリティとを埋め戻す理論的方途について検討した。 2.工学的都市計画知識・技術を基盤とした権力作動の実証的研究:(1)工学的都市計画知識・技術の主要な保有主体たる都市計画コンサルタント・ゼネコン・建設事業者等が、都市空間再編の過程で占める構造的位置を把握すべく、東京における都市空間再編に関する行政資料等を体系的に収集し、各種再開発事業に携わる施主・設計者・施工者にかかわるデータベースを整備した。(2)都市計画知識・技術の専門化過程に関するインテンシブな調査の実施に向けた基礎作業として、都市計画領域における外郭団体・業界団体・専門組織による機関誌や各種刊行物等を収集のうえ、調査対象や調査項目等を検討しつつ、具体的な調査設計に着手した。 以上を通して、次年度以降に予定する調査・分析に向けた準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本研究の主要な研究対象たる工学的都市計画知識・技術について、都市研究理論上の位置づけを明確にすべく、1.専門知識・技術と統治性に関する理論的研究に重点的に取り組んだ。結果、本研究の構想全体が、海外の研究動向をも含む都市研究の現代的な論争の文脈において占める位置が明らかになり、目指すべき指針が得られた点で、当初の想定以上の成果を得ることができた。 しかし他方で、理論的研究に重点をおいた結果、2.工学的都市計画知識・技術を基盤とした権力作動の実証的研究に関わる具体的作業の進捗が遅れる結果となった。当初は、都市計画コンサルタントや業界団体・専門化組織等を対象として、都市計画知識・技術の専門化過程に関するインテンシブな調査を予定していたが、本年度はその準備作業にとどまり、これらを実施するまでには至らなかった。また、一連の調査結果にもとづき研究成果を学会報告・投稿論文等の形で発表する予定であったが、それも本年度中には実現できなかった。 本年度はもとより基盤整備の段階と位置づけてはいたが、以上より、本研究の進捗は「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、専門知識・技術と統治性に関する理論的研究をさらに進めるとともに、並行して、本年度実施した準備作業をふまえて、2.工学的都市計画知識・技術を基盤とした権力作動の実証的研究に重点を置き、当初計画していた調査を含む具体的な作業を実施する。とりわけ、(1)工学的都市計画知識・技術の制度的基盤の解明に向けた、中央官庁や都市計画専門家組織等に関する資料の収集・分析、(2)都市プランナーの職域形成過程の解明に向けた、民間計画コンサルタントや関連業界団体に関する資料の収集・分析および都市プランナーを対象としたインタビュー調査、(3)都市計画行政における都市計画門家の役割の解明に向けた、各レベルの都市計画審議会に関する資料の収集・分析を集中的に実施する。 また、次年度以降は、これまでに得られた成果を、学会報告・投稿論文等の形で発表することに力を注ぐ。
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Causes of Carryover |
主に東京に立地する都市計画コンサルタントや都市計画領域における業界団体・外郭団体・専門家組織等を対象とした調査・資料収集等にかかる費用を「旅費」として計上していたが、準備状況の遅れから、初年度はそれらを本格的に実施するには至らなかった。 また、こうした調査・資料収集に基づく研究成果の発表にかかる費用を「その他」として計上していたが、初年度はその実現に至らなかった。 以上の結果、これらの費目について当初の計画よりも執行額が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に実施を予定していた都市計画コンサルタントや都市計画領域における業界団体・外郭団体・専門家組織等を対象とした調査・資料収集は、次年度以降に、当初から予定していた調査・資料収集の計画に組み込みつつ、これを本格的に実施する。次年度使用額は、まず当初の計画通り、これにかかる旅費に充てる。 また次年度以降は、その成果を学会報告・投稿論文等の形で発表することを目指し、それにかかる費用にも、次年度使用額を充てる。
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