2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における労働力型都市移動と家族変動の実証的研究:親方子方関係に着目して
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16K17245
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
奥井 亜紗子 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (50457032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / 都市移動 / 高度成長期 / 家族変動 / 親方子方 / 自営業 / 地域社会 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
1)研究体制の整備:3年間の研究計画を確実に実行するため、ノートパソコン等必要物品を購入し、関連する文献情報の整理等を行った。 2)「力餅」関係者へのインタビュー調査の実施:平成28年度は特に創業者の京阪神における開業の地である京都において重点的に調査を実施した。具体的には、「力餅」経営主に対してライフヒストリー・インタビューを実施するとともに、「力餅」連合幹部及び京都力餅組合組合長にも組織の概要や動向に関するヒアリング調査を行った。さらに、力餅食堂と類似店で「力餅」と歴史的に関連があるとみられる相生餅食堂組合組合長に対してもインタビュー調査を実施し、「力餅」設立と展開の歴史的プロセスに関して重要な情報を得た。 3)関連史料の収集:京都力餅組合が保存してきた「力餅」に関する歴史史料を組合の許可を得たうえで閲覧、撮影を行った。 4)北但馬フィールドワークの継続:平成28年度は「力餅」経営主を歴史的に多数輩出した兵庫県北但馬地方において二度のフィールドワークを実施した(2016年9月、2017年3月)。まず一度目は、創業者池口力造氏の出身集落である豊岡市旧奈佐村目坂集落において、住民へのヒアリングと池口氏の寄贈物がある神社等関連施設の視察を行うとともに、豊岡市内に現存する店舗を視察し前経営主に対してヒアリング調査を行った。二度目は、京都「力餅」経営主の出身地を訪問し、郷里にとどまる親戚筋の住民に対してインタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、但馬地方から京阪神都市飲食系自営業に流入した労働力型都市移動者のライフヒストリーを通じて、戦後高度成長期における農村人口の都市移動と家族変動のプロセスを実証的に解明しようとするものである。そのため、初年度にあたる平成28年度は調査対象である「力餅」の組織概要や歴史的展開プロセスの把握を行う予定であったが、おおむね計画通りに進めることができた。とりわけ、京都力餅組合に閲覧を許可された歴史史料は、京都限定ではあるが歴代「力餅」経営主輩出地を量的に把握することができる貴重な資料と位置づけられる。また、力餅食堂のみならず、歴史的に力餅から分派独立した京都におけるその他「〇〇餅食堂」の存在に目配りしえたことは、「力餅」の展開プロセスを多角的に把握しのれん分けシステムにおける親方子方関係の存在に接近するうえでの重要な契機となると思われる。 北但馬でのフィールドワークは、都市自営業流入者の輩出地の戦後の社会変動を構造的に捉え、都市移動者と出身地との関係性を把握するためのものである。今年度は機縁法により力餅経営主の親戚にさかのぼってインタビュー調査を行うことで、労働市場の展開が停滞した戦後の北但馬において、都市飲食系自営業層への連鎖移動のネットワークを有することがいかに意義のあることであったのかがあらためて浮き彫りになった。 以上を踏まえ、今年度は調査対象を複眼的に捉えるポイントをつかみえたという意味でも、進捗状況はおおむね順調であったといえる。 ただし、「力餅」経営主のライフヒストリー・インタビューの蓄積については、高齢化が進む調査対象者の体調不良等の理由によりキャンセルが相次ぎ、想定していたよりやや遅れ気味であるため、今後重点的に補完したい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成29年度は「力餅」経営主のライフヒストリーを継続すると同時に、全店舗に対して質問紙調査を実施する予定である。質問紙調査についてはすでに「力餅」連合幹部に相談をしており、5月の連合総会において検討される予定である。調査許可を得ることができれば今年度中に実施し、「力餅」の実態解明を進める予定である。
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Causes of Carryover |
助成金は平成28年度にすべて使い切る予定であったが、物品購入の際の手続き方法の勘違いにより助成金が使用できなかった物品があり、半端な次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費と合わせて使用する。
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