2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17251
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
井草 剛 松山大学, 経済学部, 准教授 (80723692)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医師の勤務体制 / 医師の雇用契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
医師の年休未取得の構造的要因―これを解明し、取得率を向上させるためには、日本国内の状況の把握のみならず、欧米諸国やアジア圏の国々などの医師の年休取得の動向や状況を把握することが必須である。医師の年休取得率の低迷はどのような国での現象なのか、そこに共通する原因はあるのか、各国の医師の年休取得行動の多様性がなぜ派生するのかなど、国際比較したデータに基づく視点で考察し、日本の医師の「年休未取得」の性格を鮮明にする。そのために、「年休未取得」の性格について、本年度は医療提供体制の異なるタイを中心に既存データを収集するとともに事例調査を行い、その比較・分析を行った。 特に大きな成果はSamitivej Sukhumvit Hospital 等の大規模病院の管理職層のインタビュー調査に成功し、日本とタイにおける医師の勤務体制・雇用契約の違いについて明らかにし、医師の年休未取得の構造的要因の解明に寄与することが出来たことである。この調査から、タイの私立病院では医師は個人の裁量で勤務体系を決められることが多いので休暇を取りやすいこと、その一方で日本では年休の権利は雇用先の病院ではなく、その病院の診療科ごとの専門職集団内のローカルルールによって決められており、また他の多種多様な要因(仕事量、人員不足など)も複雑に絡みあい、年休取得が難しい状態であるという結果が得られるた。これにより、年休未取得までの一連の流れについて、見解を示すことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他国の病院の医師調査は当初、情報セキュリテの観点から難航すると想像していたが、大規模病院等のインタビュー調査に成功した。そして、国際比較を行い、日本の医師の「年休未取得」の性格を明らかにし、年休未取得の要因を順調に抽出することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他国の調査を実施し、国際比較を行い、日本の医師の「年休未取得」の性格を明らかにし、年休未取得の要因を抽出する。この要因を最終年度に実施するアンケート調査の質問項目に組み込んで行く。ここでは医師を対象としたリサーチサービスを利用し、年休に関するアンケート調査を実施する(サンプルサイズ:500)。年休取得に影響を与える要因と年休の相関関係だけではなく、因果関係の有無、どのような因果関係が成立しているのかについて、共分散構造分析を用いた推計により、医師社会の特異性からなる医師の年休未取得の複雑な構造を明らかにする。
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Research Products
(1 results)