2016 Fiscal Year Research-status Report
労働者派遣法の比較制度分析:ドイツ、韓国、日本の事例から
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16K17252
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
児島 真爾 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 助教 (30734941)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グローバリゼーション / 不平等 / 非正規雇用 / 均等待遇 / 派遣労働 / 労働運動 / 社会運動ユニオニズム / 同一労働同一賃金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会学理論の新制度論を用いて、ドイツ、韓国および日本の労働者派遣制度の比較分析を行うことを目的としている。各国の労働者派遣制度の相違点をまとめ、記述的な分析を行うことに加え、同じ制度でもなぜこのような相違点が生まれているのかを明らかにする。 3年計画の初年度に当たる本年度は、(1) 分析ツールとなる新制度論に関する文献を読み込み、(2) 日本語・英語で出版された先行研究の収集・精読、および一次資料の収集と整理を行い、(3) 国内におけるフィールドワークを実施し、そして(4) 国際学会およびワークショップへ参加した。 具体的には、(1) グローバル化と制度変化の関係性についてinstitutional isomorphism とdivergenceのそれぞれの観点から論じられた文献を読み込み、理論的知識を深めた。(2) ドイツ、韓国、および日本の労働者派遣制度について英語および日本語で書かれた先行研究や、政府機関発行の一次資料を読み込み、労働者派遣法制定および改正の過程をまとめあげた。(3) 本年度は、日本国内において均等待遇原則(同一労働同一賃金)の法制化に向けた改革が政府によって進められたこともあり、各種委員会が公開する議事録などの資料を読みつつ、労働組合や市民団体が主催する勉強会や集会に参加し、派遣労働者を含めた非正規労働者の待遇改善を求めた社会運動の動きについても実態調査を行った。(4) 4月に韓国・中央大学(Chung-Ang University)にて開催された非正規雇用問題の専門家ワークショップ、および7月にウィーンで開催された国際社会学会にて研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
安倍政権が今年から「働き方改革実現会議」を開催し、長時間労働の規制とともに均等待遇原則の法制化に向けた動きを本格化させたこともあり、非正規労働者の待遇改善につながる日本国内の法制度改変の動きを追う方向へと調査の焦点を移した。そのため、本年度当初に予定していた平成29年3月のドイツにおけるフィールド調査を平成29年度に実施することとし、平成29年度に予定していた日本の労働者派遣法制度に関する調査を前倒しして行うことにした。したがって、当初予定していたドイツでのフィールドワークは未だ実施しておらず、国内の調査も継続中であり、予定よりやや遅れている。しかし、本年度は、法制度の改革を通じて非正規労働者の待遇改善を求める日本の労働組合やNPOの取り組みを社会運動ユニオニズムの理論的観点から分析した論文を執筆し、Economic and Industrial Democracy誌からの刊行が決定した点においては、進捗状況としてはやや遅れながらも研究成果はしっかりあげることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の二点を主に遂行する予定である。 (1) 日本国内の均等待遇原則導入の動きを継続して追い、法制化のプロセスおよびその背景にある政府の意図を明らかにし、派遣労働者への影響について引き続き調査する。 (2) 平成28年度に予定されていたドイツでのフィールド調査を実施する。夏には短期の事前調査を実施し、冬休みには資料収集と聞き取り調査を行う。 (3) 国際学会での研究発表を行う。平成29年度は、European Association of Japanese Studies (欧州日本研究学会)第15回総会(リスボン)での研究発表が確定している。
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Causes of Carryover |
当初予定したドイツでのフィールドワークを実施する代わりに、国内フィールドワークを実施したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、海外・国内における研究調査および学会発表の旅費に研究費の多くを使用する予定である。
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Research Products
(3 results)