2018 Fiscal Year Research-status Report
都市における先住民の相対的底辺化―サマ・バジャウの労働と生活
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16K17253
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
吉田 舞 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50601902)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 先住民 / 都市底辺層 / 相対的底辺化 / ストリートベンダー / 労働 / 居住 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目は、フィールド調査を継続した。9月には、本課題の成果の一部を掲載した自著「先住民の労働社会学」の書評会が東京で行われ、その後の調査および研究展開についても報告した。さらに、10月には、日本労働社会学会第30回大会にて、サマ・バジャウの人びとを含むストリートベンダーの状況について研究報告を行った。
また、3月のフィリピン調査では、先住民の集住地区の市場周辺にある家族経営によるハラール・フードの食堂にて、参与観察を行うことが可能となった。この調査では、顧客の多くがバジャウのストリート・ベンダーであったことから、現在の彼ら/彼女らの仕事や、出身地ミンダナオからマニラに出てきた経緯、結婚や職歴などの生活史について話を聞くことができた。これらの調査により、グローバル化のもとでの、都市底辺の人びとの生活変容の詳細が確認できた。また、都市開発と観光開発が進み、空間管理が厳格化するなか、ベンダーらがいかに生業を続けているか、歩き売り、露天商、賃貸店舗など、さまざまな環境下での状況が明らかになった。さらに、ベンダーをやめたバジャウの中には新しくインターネットを通じた仕事にシフトしている人もおり、中間層を対象としたバイクタクシーやバイク配達など、新たな都市の底辺労働についても確認できた。
これらの考察は、研究代表者の所属先である社会理論・動態研究所の定例研究会にて随時、研究報告を行った。また、前年度、解放社会学会にて報告した内容に、その後の調査データを加えて更新し『解放社会学研究』に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、調査対象地とのスケジュール調整の関係で、8月に予定していた現地調査が行えなかったものの、3月に集中的にフィールド調査を行い、分析に必要なデータを取得することができた。
また、前年度までの調査で得たデータをもとに、調査対象者を取り囲むマクロな状況を考察し、10月に労働社会学会にて報告を行った。また、都市開発のなかでのベンダーと国家のポリティクスについてまとめた論文を日本解放社会学会のジャーナルに投稿した。これらのことから、研究成果の公表はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本事業の研究成果を公開するため、論文執筆に焦点を当てる。ベンダーの階層化については、すでに英語での論文執筆を進めており、2019年度中にジャーナルに投稿するつもりである。
昨年度8月に予定していた、マニラの集住地のサマ・バジャウのリーダーへの追加インタビューを行う予定だが、最終年度は、基本的に、前年度までの調査結果をもとに、文献研究と理論的検証を進め、論文執筆を行う。さらに9月に行われる日本都市社会学会では、本事業の研究成果をテーマ部会にて報告する予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象地および現地協力者との日程調整が合わず、夏休み中に予定していたフィールド調査が難しくなったため、3月にまとめて行った。そのため、当初計上していたフィリピン出張の旅費および、調査に係る人件費・専門情報の提供への謝金の支出がなくなった。また、3月の調査では、調査スタイルをインタビュー調査から、参与観察に切り替えたため、現地語通訳や、専門情報の提供者など、調査アシスタントを依頼する必要なくなり、そのための人件費・謝金が発生しなかった。
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