2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症にやさしいまちづくりに関する評価指標(モデル地域版)の開発と有用性の検証
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16K17255
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河野 禎之 筑波大学, ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター, 助教 (70624667)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症 / 認知症にやさしい地域 / 認知症にやさしいまち / 認知症にやさしいまちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
「認知症にやさしいまちづくり」の評価指標の開発のため、先進的な取組を進める2地域(モデル地域)のキーパーソン17名(医療、介護、行政の関係者のほか、商店の事業主、認知症の本人、家族介護者等を含む)に対するインタビューデータに対して、専門家パネル(医療、介護、福祉の専門職及び研究者、企業関係者等)による質的分析を行った。分析の結果、各地域の特長的な取組の要素として「本人の声と行動」「SOS模擬訓練」等が抽出され、各要素を構成する「本人の言葉を聞く-本人の視点から」「訓練の参加者-主体性の広がり」等の項目が設定された。さらに、これらの項目に対して、モデル地域の状況を参考にした5段階の状態像(1:最初の一歩としての状態像~5:最終的な理想の状態像)を設定し、「認知症にやさしいまち」のより具体的な状態像の評価を可能とする評価指標を作成した。 また、これらの分析を通して「認知症にやさしいまちづくり」の評価指標の方法論を、トップダウン型アプローチ、ボトムアップ型アプローチに大別して構造化した。さらに、ボトムアップ型アプローチの一環として、質的分析による手法を参考に、当事者・住民参加型のワークショップによるプロトタイピングの手法を考案し、モデル地域のひとつとした町田市及び研究協力団体のNPOとともに、実際に市民を対象としたワークショップを開催した。その結果、計2回のプロトタイピングにより、「認知症カフェ」「認知症サポーター養成講座」に関するモデル地域版の当事者・住民参加型の評価指標が作成された。また、これらのプロトタイピングの手法を拡張して、町田市全体の「認知症にやさしいまちづくり」の評価指標を作成するために2回のワークショップを実施し、計16項目の評価指標の作成へと発展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していたモデル地域の調査及び分析については、目標数には届かなかったものの、分析を通じて、「認知症にやさしいまちづくり」は地域により特長が異なること、実際に取組を進めるうえで地域毎に評価基準を模索していること等を明らかにすることができた。そのため、研究協力団体や自治体のニーズ及び時機とも一致したため、当初の計画を変更し、それぞれの地域が主体的に取組の評価が可能となるよう、研究協力団体のNPOとともに当事者・住民参加型のワークショップを企画し、モデル地域とした町田市の協力のもと、地域自らが作成する評価指標のプロトタイピングを実施した。こうした地域の主体性を促進する取組は、日本認知症ケア学会における石崎賞の受賞、国際アルツハイマー病協会国際会議での公式ワークショップでの発表等、国内外から高い評価を受けたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の時点では、モデル地域のヒアリング及び分析に重点を置いていたが、分析結果に基づく課題と研究協力団体や自治体のニーズ及び時機とが一致したため、当事者・住民参加型のワークショップの開催による、地域自らが作成する評価指標のプロトタイピングの実施へと計画を変更した。ただし、ヒアリング及び分析に基づく評価指標の有用性は否定されていないため、今年度はこれらの取組も継続して行い、当事者・住民参加型により作成された評価指標との統合も視野に入れたうえで、当初の目標通り、より具体的で有用性、汎用可能性の高い評価指標を開発したい。
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Causes of Carryover |
計画の変更に伴い、遠方のヒアリング調査を実施しなかったため、旅費及び謝金の支出が減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遠方を含め、ヒアリング調査を継続して実施する。また、ワークショップ等の開催を通じて、自治体や当事者、住民から寄せられたニーズに基づき、成果を広く周知するための成果物の作成、公表等にも使用を計画している。
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