2019 Fiscal Year Research-status Report
貧困世帯の家計管理に介入する政策の意義と限界:日米英の展開を中心として
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16K17268
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
野田 博也 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (00580721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 家計管理 / 母子生活支援施設 / 金融教育 / 金融リテラシー / 承認 / ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
4年目は、貧困世帯の家計管理に介入する政策が依拠する原理の特質を明らかにすることが当初の研究計画であったが、その目的について前年の研究(ファイナンシャル・ケイパビリティ等についての研究)で前倒しで一部実施した。このため、それらの研究を踏まえて、日本における実践・政策の具体的な検討をもとに、政策原理に関わる論考を進めた。 まず、生活保護とパーソナル・ファイナンスの関連についても引き続き研究を進めた。生活保護では、その史的展開において、銀行サービスの利用を促したり、貸付けの活用を進めるような要件等の緩和を行うことを実施していた。それらは、行政手続き負担の軽減という側面だけでなく、自助を一層強化する方策としての措置でもあることと解釈できる。 また、その生活保護の利用が多く、かつ貧困率も比較的高い母子家庭を対象にする福祉施設での実践とファイナンスの関連についても研究を進めた。当該施設に入所する家庭は、複数の異なる社会的不利を抱えており、このような場合には「母子」が関連するファイナンスの知識・技能だけでなく、暴力(経済的搾取)の影響、知的障害・発達障害・精神障害、言語、充分な教育・学習の未経験などを個別に配慮したうえでファイナスに関わる相談援助を設計しなければならないことを指摘した。 さらに、そのことも踏まえて、改めて日本で実施・計画される金融教育の可能性と展開についても検討を行った。そこでは、現代の日本で最低限必要となる金融リテラシーを包括的に把握・整理し、そのために教育・学習を体系化しているものの、社会的不利を抱える人々に適用することは必ずしも妥当ではないことが明らかになった。 これらの検討から、家計管理に介入する政策では、自助原則や自由・自律原則に加え、個別の状況・特性に応じたケア及び承認の規範が関連すること(させるべきこと)が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本に関する研究に時間を要し、海外、特にアメリカの展開に関する研究成果をまとめることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における政策等の研究成果を踏まえ、日本の展開で問われる諸事項が海外、とりわけ政策・実践の蓄積があるアメリカにおいてどのように議論されているのか、先行研究等をもとに明確にしていく。
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Causes of Carryover |
感染症拡大に伴う移動の制限が生じ、予定していた海外渡航を取りやめた。次年度の海外渡航は困難になることが予想されるため、一部計画を変更し、前年度の研究上の課題に関わる調査研究を進める。
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Research Products
(4 results)