2017 Fiscal Year Research-status Report
無保険の状態にあるワーキングプアの保険加入促進に向けた医療保障政策の研究
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16K17273
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
櫻井 潤 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (10382508)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 無保険 / ワーキングプア / 医療保険 / 医療保障政策 / 医療保険取引所 / アウトリーチ / 連邦補助金 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の主な研究成果は以下の3点である。 第1に、2010年患者保護アフォーダブルケア法に基づく医療保険改革の実施状況に関する文献・資料の収集および検討、統計分析を行った。その結果、州単位で創設された医療保険取引所が医療保障・医療保険市場において果たしている役割を果たすために、各種のアウトリーチ活動およびNPO等の民間団体によるアウトリーチ活動の支援を積極的に行っていることが明らかになった。 第2に、州レベルでの事例研究として、カリフォルニア州の医療保険取引所「カヴァード・カリフォルニア」の活動内容に関する文献・資料の収集および検討を行った。その結果、カヴァード・カリフォルニアは州政府によって創設・運営されている医療保険取引所として最も先進的かつ典型的な事例の1つであること、保険加入を促すためのアウトリーチ活動を積極的かつ継続的に行っていることを州民・NPO等の民間団体・保険会社・医療機関などに広くアピールしていることが明らかになった。 第3に、小単位の地域レベルでの事例研究として、カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアの医療保険市場および医療保険取引所を通した保険加入実績の動向について、文献・資料の収集および検討、統計分析を行った。その結果、医療保険取引所を通して保険プランを販売している保険会社の加入者数における市場シェアや保険料が変動していること、特定の地域コミュニティ・人種コミュニティ等に対応したマーケティング・アウトリーチ戦略が存在しており、保険会社はそれらを市場の動向をふまえて柔軟に変化させようとしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度における州レベルおよび小単位の地域レベルでの事例研究は、州議会職員との間で聞き取り調査を実施することができたものの、他の関係団体の職員等と日程をうまくすりあわせることが困難であったことなどから、聞き取り調査を十分に行うことができなかった。 ただし、必要な資料をやや前倒しで収集すること、平成30年度にも現地調査を実施することなどの工夫を行うことによって、研究の全体はおおむね順調に進んでおり、研究に必要な資料・情報の収入・分析や、研究を効果的かつ効率的に進めるための内容や手順の再確認・再検討を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、現地の関係団体職員から研究協力を得るための準備を継続して行う。これらの人々との間では電子メールを用いて連絡を取る。 それと並行して、サンフランシスコ・ベイエリアにおける保険加入状況および保険加入促進活動の専門部署に所属するカヴァード・カリフォルニア職員からも研究協力を得るために、その職員との関係づくりを継続して行う。この者には、平成28年度にコンタクト を取っており、平成30年度の現地調査において聞き取り調査を行う計画である。
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Causes of Carryover |
第1に、平成29年度の文献・資料代は、可能な限り安価な古書等を購入することによって、当初の予算額よりも少ない金額に抑えることができた。 第2に、平成29年度に実施した現地調査に関する旅費は、航空券代・宿泊費・レンタカー代などが高騰する時期に調査を行ったがゆえに当初の計画よりも高額になったが、本研究とは別の個人研究を兼ねて現地調査を実施した関係で旅費の一部を所属先の個人研究費から支出した。そのことから、当初の予算額よりも少ない金額になった。 使用計画として、第1に、文献・資料代を当初の計画よりも安価に購入できたことによって節約できた分は、平成30年度に実施することが必要になった現地調査の旅費に充当する計画である。 第2に、平成30年度に実施することが必要になった現地調査に関する旅費などは、平成29年度と同様にできる限りコンパクトにすることによって、研究費のいっそうの効率的な活用に努める。
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