2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Theoretical Study on the Institutionalization of the Adoption of Children with Disabilities in the United States
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16K17284
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
吉田 一史美 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80736869)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 米国 / 養子縁組 / 障害児 / 出生前診断 / 人工妊娠中絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「障害児の養子縁組」を現在の日本の養子縁組の制度的、規範的な限界点の一つと仮定し、これを克服する議論の基盤を構築するため、米国を事例に障害児の養子縁組に関わる制度化とその理論を考察することを目的とする。 米国では、人工妊娠中絶を合憲と認めた1973年のロウ判決以降、出生前診断後の中絶を法律で禁止するのは女性の身体と人生に関する自律性と選択の自由の原則に反すると考えられ、出生前診断が普及していった。このため、米国の障害者施策はその積極性にもかかわらず、「生まれた者」に限定的したものであると指摘されてきた。 しかし、米国のフェミニストの言説では、女性の選択の権利の中に障害のある子を産む選択も入れなければならないという自律性の枠組みが提示されている。個々の女性の選択ではなく、その選択を構築する社会システムによるコントロールに注目する必要が説かれ、女性自身の自律性と自由の原則のもとで、障害児を産む選択を可能にするような社会システムや政策の実施が求められている。 1970年代以降、米国の養子制度をめぐる規範では、障害のある子どもを「特別なニーズをもつ子ども」として受容し、彼らと「選択的」に家族形成をすることが許容・奨励されてきた。障害や疾病をもった出生児の家族形成を生親に限定せず、親が養育できない「特別なニーズをもつ子ども」を社会的に受け入れる制度を整備することは、出生前診断の普及と障害者施策の拡充をめぐる単純なダブルスタンダードにとどまらない規範形成の可能性があると考えられる。
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