2018 Fiscal Year Research-status Report
発達障がい者のウェルビーイングに影響する社会的環境的因子に関する定量的研究
Project/Area Number |
16K17287
|
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
鈴木 さとみ 大正大学, カウンセリング研究所, 研究員 (00648561)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 国際生活機能分類 / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自閉スペクトラム症(以下ASD)のある青年・成人期の人々のウェルビーイングに,社会的環境的要因や自閉症特性の強さがどのような影響を及ぼしているかについて,定量的研究を用いて明らかにすることを目的としている。当年度より調査を開始し、ASDの診断のある14名に対して国際生活機能分類(以下ICF)をもとに作成した質問紙とAQ、ASRS、SF12を施行した。AQは自閉性特性の強さを測り、ASRS はADHDの簡易なスクリーニングとして、SF12は健康関連QOLを測定する質問紙として使用されている。 結果:SF12で得られたASD群の値について国民標準値と比較するため1サンプルのt検定を行ったところ、ASD群は日常役割機能(身体)、日常役割機能(精神)、心の健康で有意に低かった。3コンポーネントサマリーとの比較では、役割・社会的健康感、精神的健康感でASD群が有意に低かった。 次に、AQ、ASRS、ICFとSF-12の間に相関があるのか検討を行った。AQでは日常役割機能(身体)、全体的健康感、日常役割機能(精神)の間にそれぞれ相関が示された。ASRSにおいても日常役割機能(身体)、全体的健康感、日常役割機能(精神)の間にそれぞれ相関がみられた。ICFでは、身体機能、日常役割機能(身体)、全体的健康感、 活力、日常役割機能(精神)において相関が示された。以上の結果からASDのある人はふだんの日常生活をこなすことに困難を伴うことが示された。また抑うつ感を問う心の健康の項目でASD群は著しく得点が低かった。AQ、ASRS、ICFとSF-12との相関では、AQとASRSの両質問紙において日常役割機能の身体及び精神で高い相関が示され、ASDのある成人において自閉症特性やADHD傾向が強いほど日常生活を送ることに支障をきたしやすいことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度より調査を開始し、調査の結果、ASDのある人はふだんの日常生活をこなすことに困難を伴うことが統計的に明らかにすることができた。本年度の調査ではサンプル数が予定より少なかったため引き続きサンプル数を増やして検討を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
変更点:アウトカムに用いる予定の質問紙をPWIからSF12に変更した。PWIは国内外のASDのある人の量的研究の先行研究が探した限りでは1件のみであったため、自閉症を対象にした先行研究数が数例あり日本人の国民標準値との比較が可能なSF12を使用することにした。 また、ASDのある人との比較で定型発達群のデータも必要となるため、定型発達群にも協力を依頼することとした。 今後について:ASDのある人に社会的環境的要因や自閉症特性の強さがどのような影響を及ぼしているかについて詳細な解析を行うためには、更に調査への協力者が必要であるため、引き続き協力者の募集を行っていく。
|
Causes of Carryover |
代表者が海外に在住しており当年度は妊娠、出産と育児が重なったため、調査への協力者を集めることが予定よりも下回った。そのため、使用予定としていた謝礼額を満額使用できなかった。今後も継続してサンプル数を増やす予定であるので、次年度使用額については育休が明け次第、謝礼額として使用していく予定である。
|