2021 Fiscal Year Research-status Report
発達障がい者のウェルビーイングに影響する社会的環境的因子に関する定量的研究
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16K17287
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
鈴木 さとみ 大正大学, カウンセリング研究所, 研究員 (00648561)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 国際生活機能分類 / 新型コロナウィルス / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はASD 者のウェルビーイングに自閉症特性の強さや精神症状,社会的及び環境的因子等がどのような影響を与えているかについて,定量的に明らかにすることを目的としている。 研究の中で、新型コロナウィルスの流行の影響を受け、取得したデータの経時的変化の比較が難しくなったため、新型コロナウィルス下のQOLを既存の質問紙とオリジナルの質問項目を加えて検討してきた。 回答を得られたASD成人のうち、コロナ禍での生活の変化(趣味娯楽時間、仕事量、収入、医療ケアへのアクセス、会話量、睡眠時間等)は、K6やGAD7などの抑うつや不安障害とは相関がみられなかったが、SF(健康関連QOL)やICF(国際生活分類)の項目とは相関していた。具体的には、コロナ禍においてそれ以前よりも睡眠時間が増えた群は、SF-12の全体的健康感とICFの環境において正の相関があった。インターネットやSNS、ゲームの使用時間が増えた群は、ICFの活動・参加と正の相関がみられた。収入の増減は、ASD群ではICFやSFに関連は示されなかった。役割/社会的健康度の低い群では、医療的ケアを受ける頻度の増加と相関していた。会話量の減少は、体の痛みの増加と相関し、趣味や娯楽の活動の増加は社会生活機能は負の相関を示した。 一方で、K6やGAD7などの抑うつや不安障害と関連していたのは、特に、主観的な家族関係と感覚過敏(気圧の変化、光、臭い)であった。 主観的評価で家族とうまくいっていない群は、主観的に家族関係が良好な群と比べ、対応のないt検定で抑うつ(K6)が有意に高かった。また、感覚過敏(気圧の変化、光、臭いの不快さ)のある群は、ない群と比べ抑うつが高く、コロナ禍におけるASD者の支援では、家族関係の調整や本人の不快感を軽減するための環境調整であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィル流行の長期化の影響により、調査項目の検討と変更が必要になったため
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、質問紙調査の母数を増やして実施する。またASDのある成人のウェルビーイングを自由度が高くかつ定性的に把握する目的で、アウトカムにSEiQOLを用いて検討することとした。SEiQOLはワーキングメモリの弱い方には難しいとされるが、ASDのある成人数名に試行したところ、理解と回答での困難さはなかった。 結果については、構造方程式モデリングを用い、ASDの主観的ウェルビーイングと社会的環境的因子の関係について検討する。
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Causes of Carryover |
調査費用、学会参加に係る出張費等が新型コロナウィルス流行による行動制限で要しなかったため。
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