2016 Fiscal Year Research-status Report
飲酒・喫煙習慣にセルフコントロールが促進・抑止の両面から作用するメカニズムの解明
Project/Area Number |
16K17293
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 崇志 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 特定助教 (70758424)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セルフコントロール / 規範 / 飲酒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、セルフコントロールが飲酒・喫煙習慣の獲得に促進・抑止の両側面から作用するメカニズムを明らかにすることである。平成28年度は、成人を対象としたインターネット調査と、大学生を対象とした質問紙調査を実施し、特性セルフコントロール、飲酒・喫煙習慣に関する規範の認識、飲酒・喫煙習慣の関連について検討した。成人を対象としたインターネット調査からは、「頻繁に関わりのある他者は高い頻度で飲酒している」という規範の認識を持つ人は飲酒頻度が高いという関係がみられた。また、この関係は特性セルフコントロールによって調整されており、特性セルフコントロールが高いほど規範と飲酒頻度の関係は強かった。喫煙に関しては、こうした関連は見られなかった。大学生を対象とした質問紙調査からは、成人を対象とした調査と同様に「頻繁に関わりのある他者は高い頻度で飲酒している」という規範の認識を持つ人は飲酒頻度が高いという関係がみられた。一方で、成人を対象とした調査とは異なり、特性セルフコントロールによる調整効果は見られなかった。以上の2つの調査結果より、1)飲酒と喫煙で異なるメカニズムを考慮する必要があること、2) 年齢や就労・就学といった属性の違いによる影響を考慮する必要があることが示唆された。研究成果の一部は、日本社会心理学会第57回大会や海外での研究ワークショップで発表し、他の専門的な研究者と議論する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では大学生を対象とした調査を行うことを予定していたが、これに加えて、成人を対象としたインターネット調査を行った。計画段階より幅広い層を対象とした調査を行うことで、セルフコントロールが飲酒・喫煙習慣の獲得に促進・抑止の両側面から作用するメカニズムについて、想定していなかった新たな視点が必要であることを示す知見が得られた。成人と大学生を対象に行った2つの調査結果より、1) 飲酒と喫煙で異なるメカニズムを考慮する必要があること、2) 年齢や就労・就学といった属性の違いによる影響を考慮する必要があることが示唆されたため、仮説について再度吟味し、やや修正する必要があると考えている。このように計画以上の検討を行っている側面もあるが、仮説について再検討する必要があったがために、計画段階では予定していた、社会的ネットワークを用いた調査研究の実施に移ることができなかったという計画しながらも実施していない側面もある。両側面を総合的に考慮し、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、調査の結果を踏まえて、1) 飲酒と喫煙で異なるメカニズムを考慮する必要があること、2) 年齢や就労・就学といった属性の違いによる影響を考慮する必要があることの2点を考慮した仮説の再検討をすみやかに行う。当初は大学生集団を対象とした調査を行うことを計画していたが、再検討された仮説に従って、必要に応じて、成人を主とした社会集団や夫婦・家族を対象とした調査や、詳細な心理メカニズムに迫るために心理学実験を行うことも考える。そのうえで、経験サンプリング法や社会的ネットワークといった手法を活用した調査を行い、セルフコントロールが飲酒・喫煙習慣の獲得に促進・抑止の両側面から作用するメカニズムについての知見を得る。得られた知見は国内外の学会大会で発表して他の専門的な研究者と議論する機会を持つ。また、国際誌に論文として発表し、高校生向けの心理学講座やプレスリリースなどの機会も活用して、国内外の幅広い層に知見を発信し、研究成果が社会に還元されることを目指す。
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