2017 Fiscal Year Research-status Report
一時帰郷としてのルーツ観光体験が移民子孫の心理に及ぼす影響
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16K17296
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632238)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民 / ルーツ観光 / 沖縄 / 子孫世代 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、H28年秋~H29年春にかけて採取した「第6回世界のウチナーンチュ大会」での量的調査(以下、大会調査)、および沖縄系移民3世・4世への面接調査(以下、面接調査)のデータ分析と研究報告を行った。
<大会調査の分析>本研究は「沖縄系移民」の子孫世代を研究対象としているが、「沖縄系」であること以外のデモグラフィックな要因(年齢、移民世代、現在の居住国、家族構成など)にはかなり分散がみられる。そこで、大会調査で得られた数量的なデータを用いて、ルーツ観光の背景となる移民の居住地(国)や世代による違いを把握する目的で、価値観比較を行った。具体的には、主な移民先として挙げられる、北米(ハワイのデータを主とするアメリカ合衆国、カナダ)、中南米(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ペルー、ボリビア)と、沖縄県民の価値観を比較した。その結果、北米・中南米の移民1世と中南米の移民2世で伝統的価値観が、北米2世以降と中南米3世以降で個人主義的な価値観が優勢、などの傾向が明らかになった。以上の内容は、H29年度の日本社会心理学会大会で研究報告を行った後、学術誌に論文としてまとめた。
<面接調査の分析>インタビューは、訓練を受けた学生調査員が聞き取りを行った簡易版(対象者は、沖縄系移民約60名)と、より深いライフストーリーも含めて聞き取る長時間版(対象者は、沖縄系移民11名)があった。長時間版については、対象者それぞれのアイデンティティに関する語りの内容を中心に、質的分析を行った。その結果、ルーツ観光が刺激となって生じるアイデンティティの変化として、「エスニックアイデンティティ強化型」「ホストアイデンティティ強化型」「ハイブリッド型」の3パターンがみられることなどが明らかになった。これらの内容は、H29年度にニュージーランドで開催された国際会議(アジア社会心理学会)で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「面接調査」の結果について、より深い洞察を踏まえた分析と解釈が必要だと考えられたため、予定よりも時間をかけて入念な分析を行うこととした。また、その解釈のための情報として「大会調査」も役立てられると考えられたため、大会調査で得られた量的データの分析を、当初の予定より多くの研究時間を割いて行った。 なお、H29年度は申請者が産前産後休暇を取得し、その前後数ヶ月間も含めて研究を中断せざるを得なかったため、延長申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、面接調査で得られた質的データの分析と成果報告を中心に行う。質的データの分析の方針として、具体的には、ルーツ観光体験が移民子孫世代(主に、3世と4世)の自己の捉え方、沖縄と居住国の捉え方、日本と居住国の捉え方などについて、異文化間心理学の知見をもとに解釈を行う。分析の過程で参加者に関する情報が不足する場合には、補足のための追加調査を行う。追加調査の対象は、これまで実施した面接調査で継続調査への協力に同意が得られた参加者を予定している。対象者は海外在住であることが多いため、オンラインで調査協力依頼、WEBアンケートの配布を行う。 研究成果について、今年度開催される異文化コミュニケーション学会の国際大会、社会心理学会などで発表を予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度に産前産後休暇取得で研究を中断することとなり、研究計画を次年度に延期(1年間延期)するよう調整したため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)