2016 Fiscal Year Research-status Report
暴力発生メカニズムの実証的検討―暴力への潜在的態度の影響力-
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16K17299
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
荒井 崇史 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (50626885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 暴力 / 潜在的態度 / 潜在連合テスト / 快 / 不快 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の全体的な目的は,暴力に対する潜在的態度が暴力の発生に関係する要因であるのかどうかを検討することにある。この全体的目標を達成するために,2016年度の具体的な目的は,暴力への潜在的態度を測定するための暴力IATを洗練させ,暴力への潜在的態度が将来の暴力行為を予測できるかどうかを検討することであった。 この目的に対して,2016年度は荒井(2015)で作成した暴力IATの対象カテゴリ(「暴力的カテゴリ」と「平和的カテゴリ」),属性カテゴリ(「快カテゴリ」と「不快カテゴリ」)の刺激項目の修正を行った。具体的には,各カテゴリに含まれる項目を,荒井(2015)を含めてさらに広く収集し,大学生を対象に予備調査を行い,各カテゴリを最も良く表す刺激項目を抽出した。 その上で,現在,大学生約70名を対象に,3回にわたって縦断的に実験を行い,暴力IATによって測定される暴力への潜在的態度が,将来の暴力行為を予測し得るかどうかを検討している。なお,Time1では暴力IAT及び暴力IATの妥当性を検証するための質問紙を,Time2として,Time1から4週間後に暴力IATと暴力経験を問う質問紙を行った。また,Time3としてTime1から24週間後に暴力IATと暴力経験を問う質問紙を実施する予定である。現在,Time3に向けての時期であるが,Time1で得られた結果では,暴力へのネガティブな態度が少ないほど,過去の暴力経験が多いという,荒井(2015)を支持する結果が得られている。また,これと合わせて,Time1における質問紙から暴力IATの妥当性を検証したところ,概ね暴力IATが妥当性を備えた測度であることを示す結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,2016年度中に暴力IATの各カテゴリの項目を洗練させ,将来の暴力行為を予測するかどうかをTime1,Time2及びTime3まで測定する予定であった。暴力IATの項目を洗練させるために,予備調査を実施し,Time1及びTime2までの暴力IATの測定を行えた点では,予定通りの進捗であったが,Time3を2017年度に実施することになった点で,やや進捗が遅れていると判断される。 この理由としては,第一に項目を洗練させることに予想以上に時間を要した点が挙げられる。暴力IATの精度を上げるためには,IATに使用する項目が極めて重要であり,これを選定するために慎重を期したためである。第二の理由は,暴力IATの項目洗練の過程で,Single-Target IAT(ST-IAT)の利用可能性を検討した点である。当初は,ST-IATは念頭になかったが,先行研究をより詳細に検討する過程で,その利用可能性を探ることに時間を要したためである。第三に,実験参加者の募集が予想以上に困難を極めたためである。一回限りの実験とは異なり,三回にわたる縦断実験を行ったために,実験参加者の募集が予定通りにはいかなかったことが大きな要因である。 これらの点から計画よりやや遅れた進捗になったと考えられるが,暴力IATの項目洗練に向けて準備は整っており,次年度の研究に向けてほぼ準備は整っていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,まず2016年度実施の研究のTime3の測定を実施するとともに,そこで得られたデータの詳細な分析と暴力IATを確立する必要がある。それを踏まえた上で,研究計画に含まれる実証研究を予定通りに実施する。 具体的には,暴力概念のアクセシビリティと潜在的態度との相互作用によって,暴力的認知や暴力的行為が影響を受けるかどうかを実験的に検証する。この際,当該分野の先行研究や国内外の研究者や有識者との議論を踏まえて,研究2の実験手続きや測定方法の細部については柔軟に変更する。特に,既に検討を始めているが,行為としての暴力を従属変数として測定することには,倫理的な面において大きな問題をはらむ難しい課題である。したがって,過去の先行研究を十分に検証し,倫理的側面において問題が生じず,かつ暴力の測定手法として妥当性の高い測定方法を検証することが必要である。
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Causes of Carryover |
当該使用額が生じた理由の一つは,学内の職務に追われ国際学会への参加を見送ったために生じたと考えられる。また,実験を実施するために計上した物品費に関して,予想以上に安価で実験を実施することが可能であった点に加えて,実験がやや遅れている点も当該使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に関しては,やや遅れている実験を継続するための各種物品購入や謝金支払いが必要となり,当初の通りの予算の執行を行う予定である。また,こうした研究成果は,積極的に国内外の学会にて発表し,当該領域の研究者と議論を行うためにも,旅費として活用することが必要となる。さらに,可能な限り実験におけるサンプル数を増やすことを目指して,適宜,予算を執行する予定である。
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