2016 Fiscal Year Research-status Report
両価的な対人関係の影響下における夫婦ストレスモデルの構築
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16K17315
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
黒澤 泰 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 講師 (00723694)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 夫婦 / ストレス / 夫婦内ストレッサー / 夫婦外ストレッサー / 両価性 / 親密な関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現実の複雑さをとらえるため、夫婦を取り巻く人間関係の諸問題を含めた夫婦ストレスモデルを確立することを目的としている。平成28年度は、ストレス源についての研究を進めた。対処行動には、対処のターゲットとなるストレス源が存在する。しかし、夫婦が抱えうるストレス源を多側面から、かつ、国外研究と対応する形で使用されている日本語の尺度は存在しないため、国際比較研究や、この尺度を用いた調査研究(ストレス源のどの側面が心理的な悪影響をもたらすのか)が行えない段階である。
平成28年度は、関連領域の文献検討を行い、夫婦が抱えるストレスは、夫婦内から発生するもの(内的ストレッサー)と夫婦外から持ち込まれるもの(外的ストレッサー)、日常的に経験するもの(慢性ストレッサー)とライフイベントとして経験されるもの(急性ストレッサー)の4つの側面から測定可能であること、及び、これらの側面と関連する知見をまとめた。さらに、これらの側面を測定可能であるMultidimensional Stress Questionnaire for Couples (以下、MSQ)の日本語版作成のため、原著者(Dr. Guy Bodenmann)から許諾を得て、バックトランスレーションも含めた日本語訳を行い、日本語版を作成し、尺度としての信頼性と妥当性を検証するための研究デザインの立案を進めた。今後取り組む日本語版の作成により、法定婚の夫婦にとどまらず、親密な二者関係に焦点を当てた研究を促進・拡張しうること、及び、ストレス知覚のずれと類似が夫婦に対してどのような心理的影響を与えることができるかについての知見が得られることが予測される。また、次年度以降、作成されたMSQの特徴を、夫婦の外にある対人関係の両価性(サポートとストレス)についての研究につなげていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成28年度中に第一回質問紙調査を終了する予定であった。しかし、関連研究のレビュー、及び、原尺度の意図をくみ取り、さらに日本の社会的・文化的特徴を組み入れた日本語版の作成、及び、調査デザインの決定に対し、予定していたより時間を要した。そのため、調査の開始が当初の計画よりも遅くなった。
また、研究目的をふまえ、調査対象者の条件として、MSQを用いたMerz et al. (2014)の先行研究を参考に、年齢は20歳から45歳(均等ではなく自然発生での割付)、婚姻歴が1年以上(婚姻期間中ずっと同居)という条件設定を行い、平成29年度に調査を実施することとした。現在は、茨城キリスト教大学の第一回倫理審査を受けている状況であり、倫理審査終了後、調査会社を通したオンライン質問紙調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
MSQにおいて侵襲性が高い項目が存在するため、個人が特定されないオンライン調査を、平成29年度に行う予定である。第一回目の調査実施においては、調査会社に調査委託を行い、調査人数(1回目)として、既婚男性200名、既婚女性200名を想定している。この調査会社には、多種多様な背景を持つ45万人の一般会員モニターが存在し、オンライン調査を委託することで、一般化可能性が高い知見を得られると考える。上記回答者より最終調査人数(2回目の再調査)として、既婚男性150名、既婚女性150名を予定している。
この調査と並行し、来年度以降の夫婦ペアデータを集めるために、平成30年度におこなう大規模短期縦断研究の調査デザインを立案する予定である。また、この調査においては、保育園や幼稚園を通した質問紙調査を予定している。そのため、茨城県内の幼稚園・保育園に調査依頼を行い、調査協力先を開拓していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、平成28年度に、第一回調査を行う予定であった。しかし、原版尺度からの翻訳手続き、調査計画の立案、茨城キリスト教大学の倫理審査委員会への提出に、想定していた以上の時間がかかったため遅れが生じている。このため、平成28年度に計画していた調査の一部が実施できていないため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、平成28年度に予定していたオンライン調査を実施する予定であり、その費用として使用する予定である。また、平成28年度に続き、調査協力者のリクルートのための費用、文献等の複写費や購入費、分析ソフトの購入費、本研究が予定している分析への助言(特に、尺度作成のための応用的な多変量解析と短期縦断研究のための分析)など専門的知識の提供に対する謝礼などが必要である。加えて、今年度は、国内外の学会発表を予定しているため、そのための旅費も予定している。
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Research Products
(4 results)